体内金属の取り扱い


 最近(5年以内)外科で使われる金属はチタンや高品質ステンレスが主ですので、MRI検査を行なってもまず問題ありません。10年以上前のものはかなりの確率で品質の悪いステンレス(ここでの品質はクロムの含有量の多寡を示します;クロムが多い方が高品質で磁性は弱くなります)が使われているので、まず行わないほうが無難でしょう。その中間(5〜10年前)は難しいですね。大きな病院での手術の場合はまず問題ないことが多いのですが、中小の病院など、在庫の関係でときに強磁性体が混じっているようです。

 強磁性体の物体で危険なものとしては動脈瘤クリップなどが代表的です。強磁性体はMRIの磁場内では移動のみならずねじれが加わりますので、柔らかい血管にはさんでいるだけですので脱落することが多いのです。

 腹部外科では問題は少ないでしょう。腹腔内のステッチ針などは腹膜の癒着によりしっかり覆われているはずですから、まず脱落することはありません。整形外科で使われるものも大丈夫。骨などにしっかり固定されていますから。

 心ペースメーカーは固定レートに調律が移行しますので、症例によっては致死的な不整脈の発生を助長します。しかもペースメーカーと心臓を結ぶリード線にMRIが電位を発生させます。これがくせもので、あたかも心筋が収縮したかのようなスパイクを生じるので、発見が遅れるのです。

 さて、体内の金属ですが、MRI検査で問題になるケースの方が少ないので、そちらを憶えましょう。

・脳動脈瘤クリップの一部(最近のものはOK)
・電子装置(ペースメーカ・人工内耳・リザーバーの一部)
・眼窩内の金属片(銃弾など)
・その他の強磁性体物質(ある種の義眼・磁力接着型の差し歯・各種ステントの一部)
・スワンガンツカテ
・挿入直後(4週間以内)の下大静脈フィルタ

などには注意が必要というか基本的にはやらないとすべきです。

 脳動脈瘤クリップの場合は

・チタン製
・以前、高磁場MRIを撮ったが大丈夫であった場合

のときは安心ですが、それ以外ではやめておいたほうが無難です。

 以上でだいたいの場合はカバーできていると思われます。ただ、事故は一度でも起きるとやっかいなので、問診はくれぐれも問診表と口頭との2回確認すべきです。口頭のみでは証拠能力がありません。問診表も患者がよく理解せずに書くことが多いので、問診表を見ながら必ずもう一度口頭で詳しく訊き直すことですね。


タイトルページ
ホームへ