聴神経腫に対する造影MRI


 医師によってはめまいや耳鳴を訴える患者全員に造影MRIを行なっているが、最近のMRI装置を使う限りにおいて、スクリーニングで造影剤は必要ない。

 アメリカの文献によると、聴神経腫を疑われた200人に造影剤を使用したところ、造影剤なしでも診断できたのは19人、残り181人のうち造影で小腫瘤が見つかったのが1人。1人(0.5%)のしかも非常に小さな腫瘍の見落しを防ぐために、スクリーニングで高価な造影剤を200人全員に投与する(日本でも約260万円かかる)のはナンセンスであると結んでいる。

 アメリカではMRIの検査料がべらぼうに高く(安い施設でも日本円で5万円はするので最低3倍である)、MRIを安易には薦めない。上記は専門医が強く聴神経腫を疑った症例にあらかじめしぼってある結果であり、同様の検査を気軽に施行する傾向のある日本でおこなった場合は分母がさらに多くなるため確率はさらに低下すると思われ、はるかに非経済的であると思われる。

 古い装置や低磁場の装置では造影剤を使用しないと見落しが多くなると思われるので、施設によっては造影剤が必要になるケースが増えると思われるが、適切なコイルや撮像法を工夫することにより見落としはかなり防げるので、最初から全例造影するのは賛成できない。

 ということでスクリーニングでは造影剤なしで行ない、そこで異常を疑われた場合のみ造影を行なうべきである。


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