Feridex について


■Feridex とは

 鉄の化合物を主成分とした静注用製剤で、生体内の網内系組織に取りこまれる。現在のところ肝の腫瘤性疾患に対する存在診断に適応がある。肝では Kuppfer cell に取込まれて、その周囲の局所磁場が不均一になることにより肝実質の信号が低下する(特にT2強調画像・FE法)。Kuppfer cell を持たない病変は周囲の肝組織より相対的に高信号となるので、そうした病変の存在はより明らかになる。結果として転移などの小病変の検出率が向上する。

 基本的に存在診断に使う薬であり、質的診断にはあまり役立たない。なぜなら、
 ・Kuppfer cell を持たない病変(嚢胞・血管腫・転移の鑑別など)同士の質的鑑別は原理上できない。これらにはガドリニウム系の造影剤が適応。
 ・Kuppfer cell を持つ病変(FNH など)かどうかの質的診断には造影前の画像と比較する必要がある。造影前後で信号の低下の度合を正常部と比較する必要があるからである。

■解釈上のピットフォール

 存在診断に関しては門脈内の血流が高信号になるので、それと病変との鑑別が困難なときがある。
 質的診断に関しては、
 ・Kuppfer cell を持っている病変でも Kuppfer cell の分布が周辺正常部より疎であれば、Kuppfer cell を持たない病変と区別できない。
 ・Kuppfer cell の含有量・分布が周辺正常部と同じであれば、Kuppfer cell を持っている腫瘤と診断できる。ただし、もともと周辺と全く同じ信号を呈していれば描出されない。
 ・Kuppfer cell の含有量が周辺正常部より多ければ、Kuppfer cell を持っている病変と診断できる。ただし、これにも造影前の画像が必要(もともと低信号であれば、この診断は間違いのことがあるので)。

■まとめ

 存在診断に使う場合: 造影前のMRIは必ずしも必要ではない。
 質的診断に使う場合: 造影前のMRIが必要。もしなければ存在診断の意味しかない。

■使用法

 検査当日、Feridex を点滴。その際添付文書をよく読むこと。点滴速度が速すぎる(患者により適当な速度は異なる)と、腰痛・悪心などの副作用が生じることがある。造影効果は比較的長く、通常は点滴後 30-180分後ぐらいから撮影を開始すれば、効果は十分得られる。


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