その後のMRI |
1について: ここでは示しませんでしたが、同日のT1強調画像では同部は軽度の低信号を示し、急性期から亜急性期の梗塞(虚血による壊死)との鑑別が問題になります。梗塞にしては、支配血管の異なる両側の橋にび漫性かつ左右対称性に見られることがやや奇異であり、臨床経過からも central
pontine myelinolysis が疑われました。この高信号は白質を構成する神経線維の脱髄によるとされ、浮腫は伴わないので腫脹はほとんど見られません。この高信号の外側を取り巻く、主に横走する白質線維との境界が明瞭であることも鑑別点になるでしょう。
さて、この疾患は低ナトリウム血症に対する急激な補正が原因であることがほとんどとされていますが、結構ゆっくり補正しても起こることがあるため要注意です。この症例では低ナトリウム血症は明らかではありませんでしたが、膵炎のためにIVH管理下にあったこと、それ以前からの拒食症による栄養不良状態であったことなどから、電解質のアンバランスネスがあったことは十分に疑われます。
2について: 若い人でこのような萎縮が見られるとき、
a)先天性疾患(代謝異常・低形成性疾患など)
b)長期の栄養不良状態(慢性炎症・アルコール中毒・極端な偏食など)
c)薬物の影響(ステロイド・抗癌剤など)
などを考えるべきです。
上の写真は発症約3ヶ月後のものです。高信号は弱くなり、しかも内部が不規則になっています。このときは意識レベルは明瞭でしたが、四肢の筋力低下がまだ残っていました。幸い、この女性はさらに数ヶ月後には徐々に回復し、退院されました。
今回は結構特徴的な画像を呈する疾患であり、知っていれば至極簡単なものでした。たとえ知らなくても、滅多にない疾患ですのであまり勉強にはならなかったかもしれません。その意味では愚問だったかもしれません。古いスライドからつくったため、写真の質も非常に悪いものでした。
皆様のご意見をお聞かせください。
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