Answer of Case 4 (高位頚静脈球 high jugular bulb)


CT x6
連続スライスのCT

 問題で提示したCTでの異常所見は、
   錐体骨内で半規管の内後方に存在する辺縁明瞭な骨欠損
です。

 上に示した連続スライス(左上が一番尾側で右下が最も頭側)では、病変は上方は盲端(憩室状)で下方は頚静脈孔につながり、その正体は頚静脈孔を通るものから生じたものであることが推測されます。神経鞘腫なども否定はできませんが、わざわざ上方の硬い骨内へトンネルを掘るように伸展することは珍しいと思われますので、やはり一種の奇形である「高位頚静脈孔」と考えられます。今回は手術は行ってませんので確診したわけではありません。ですから錐体骨内に発生した腫瘍である可能性は完全には否定できません。
 本症は正常人の数〜20パーセントと非常に多い割にはあまり注意を払われておりません。症状がないことがほとんどであるからと思われますが、ときに難聴が見られることがあります。耳鼻科医にとってはさほど珍しくもない疾患ですが、放射線科医の間ではあまり話題にならないようです。
 当症例では右側のみに進行性難聴を認め、高位頚静脈孔も右のみに認めました。しかも外側は中耳腔内に接し、骨壁を菲薄化させてわずかですが膨隆しています。このような例では、鼓膜が拍動しているか、もしくは頚静脈を圧迫すると鼓膜が拍動するのが見られることがあるそうです。この所見は症状のない症例ではあまり見られないもののようで、難聴の出現と関連があるかもしれません。とはいっても正常異型(破格)の一種であり、難聴の原因である可能性はかなり低いと考えておくべきでしょう。

 今回は実際の臨床の場でフィルム(上の連続スライス)を見ますと、診断は簡単だと思います。一枚だけ出したのはズルいわけですね。
 皆様のご意見をお聞かせください。


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