女児であること、この腫瘤がその位置から考えて内性器であることに気がつけば診断は比較的簡単です。下の壁の薄い大きな紡錘状嚢胞が月経血の充満により大きくふくらんだ腟であり、その上に乗っかっている壁の厚い嚢胞が子宮です。
本症は処女膜が先天的に閉鎖しており、思春期とともに月経が始まっても、その血液は体外に排出されずに子宮より壁の薄い腟に溜まり、これを大きくふくらませます。血液の量が十分多くなると、月経周期に合わせた周期的な下腹部痛(子宮の収縮による)をきたすようになります。乳房の発育はよいのに月経だけがまだ来ないようなときはこの疾患も疑うべきです。
当症例ではCTよりもUSやMRIが撮られることが多いと思います。当院ではMRIよりも先にCTを撮ってしまい、これで診断がほぼ確定したのでMRIは行っておりません。以上のCT像はこの疾患に特徴的と考えられます。
画像的には「重複腟・重複子宮例でときに見られる片側のみの腟閉鎖」との鑑別が必要ですが、こちらの疾患では月経は間隔は長い(約2ヶ月に1回のことが多い)ものの皆無ではありませんので臨床的に区別が可能です。MRIでは健常側の半側子宮が見られたり、形状が左右非対称であったりするなどの所見が見られれば鑑別は可能でしょう。またこの疾患では同側の腎臓の欠損がほとんどの例で見られます(腎の欠損がないのは世界でも数例です)。「精嚢嚢胞と同側の腎欠損」がこの疾患の男性型とされています。
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