リンゴ病

1997年1月30日

   今晩は天声人語風(どこがや!?)に行きます。

 りんごは不思議な果物である。青いバナナの熟成を促進する、ジャガイモの発芽を抑制する、ケーキの風味を落とさない、などの効果があるという。自分が腐ることは抑制できないらしいが、あっちをなだめたり、こっちをたきつけたりするような奇妙な振る舞いについては知人の誰かを髣髴とさせて微笑ましい。古くはニュートンに真理を教え、昨今では台風に耐えた根性者が入試シーズンに珍重されたり、何かとお騒がせなおもしろいやつである。

 さて、そのアップルだがアメリカでは最近ネクストを合併した。次代のOSの開発が袋小路に入って久しいが、昨年末には Be-OS を次期 Mac-OS として採用する動きが伝わってきた。ところがふたを開けると Be はどこかへ蜜を吸いに行ってしまい、かわりに採用されたのは半分腐った(なにが半分かと言うとハードウェアの分ね)あの NEXT であった。これはびっくり。NEXT なんててっきり Be の当て馬だと思っていたからだ。そして発表されたマック用の新OSは Rhapsody。うーん、狂想曲ときたかね。教祖紆余曲折じゃないけど、たしかに狂騒状態だったもんな。

 ちまたでは Win95 が増殖してもはやどうにもならなくなってしまっているが(どうにかしてくれい)、アップルがあの秘密主義を貫き通す以上はシェア奪回は困難である。ソフトハウスは売れる機械(プラットフォーム)の方を選ぶので、マック用のソフトは開発が遅れたり発売が中止になったりして、機械はさらに売れなくなるという悪循環に陥るからである。ソフトハウスの立場からしても、マックはOSのバージョンアップが遅いので、あとから開発しても十分大丈夫と思い、Windows 版を先に発売してそれをあとからゆっくりマックに移植することになる。誰でもこう考えるよね。また、マックでソフトをつくるより Windows のソフトをつくっていたほうが効率がよい。これはなぜかというとロイヤリティの問題である。あの悪名高きニンテンドーもどんどんソフトハウスに逃げられているが、これはロイヤリティが高いせいである。そしてこの高いロイヤリティというのも古き良き時代からのアップルの専売特許なのである。わざわざ使いにくい開発環境のマシンでソフトを苦労して開発したとしても、シェアが少ないと少ししか売れず(相対的にソフトが高くなり、それがまた売れ行きを落とす)、その少ない儲けの中からかなりの分をピンはね(これがロイヤリティ)されるのであるから、誰でも逆上する。

 さて、シェア回復のカンフルとなる切り札の Rhapsody であるが、98年末まで出ないのでそれまでマイナーバージョンアップで繋ぐという作戦である。Rhapsody ではメモリ空間をアプリごとに隔離して保護するので、マックの最大の欠点であるクラッシュを回避できるという。マルチプロセッサにも対応。しかし、こんなことは Windows NT や UNIX ではすでに実現されている。特に後者ではもはやかびの生えるくらいにこなれた技術である。さて98年末にまにあったとして、そのときの Windows(Windows NT 6.2?)と比べて進んでいる点があるのだろうか? Win95 は Mac89 だとか揶揄していた者がつくるのだから、きっといいものなんだろう、な、え? それともかっこいいだけか? ルックアンドフィールばかりを気にして太平楽を決め込んでいるキリギリスさんは、せっせと地べたを這いずりまわっているアリさんに勝てるのだろうか? はたして新しい「次なる」リンゴは腐ったリンゴを再生させることができるであろうか。ジョブズ氏のグッドジョブに期待したいものである。

 あ、落ちがない・・・ 落ちないのは台風リンゴにかけてありますぅ
 

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