バイアグラ

1998年9月30日


 

 いわゆるひとつのアレですが、最近、違法輸入で捕まっているヤツが多いですねえ。「しかし、ほんとに効くんですかねぇ」という半信半疑の人がいますが、死人が出るくらいですから効くと私は断言します(ッテオイオイ)。薬ってのは副作用が強いものほど、主作用も強いものです。

 私の興味はみなさんと同じで、彼らはいつどこで死んだかってことです。で、調べてみました。ずばり、1/6 が腹上死でした。え、そんな少ないの? この薬、「飲むなら乗るな、乗るなら飲むな」の対極で「乗るから飲む、飲んだから乗る」の世界ですから、もっと多くの人がアレの最中に御昇天なさるのだと思っていました。ということは、5/6 の人は無事にその夜おすましになられた後、「もう効かなくてもいいぞ」とカラダの中を巡っている薬にお願いしても、ロマンティックでない時間的に散文的にお亡くなりになっていたわけですね。うーん、解毒剤をつくれば爆発的に売れるかも。^^;

 ところで、この薬は日本で発売される予定ですが、おそらく養毛剤などと同じく医薬部外品として売られるのだろうと推測されています。じゃ、名前はやっぱり「不老チン」ってか???

 しかし、この薬が発売されると妾宅で亡くなる人が増えるんでしょうね。いまも当直の晩にできたてほやほやの仏さんがかつぎこまれて来ることはしばしばあります。ときどき、着いた途端に救急隊員がボソッと一言。

「私らが行ったときにはもう死んでました」

 ピザの宅配じゃないんだから、死んでいるのを連れてこなくてもいいのに(すでに死んでいる場合はほんとうは医師が現場まで検死に行かなくてはいけないのですが、監察医に頼んでも嫌がられたりすることも多いので、救急隊が病院に死体を運んでくるケースがあるのです)。この後、ちょっと気まずいやりとりがあり、死亡診断書の作成とあいなるわけですが、これからは「死んだ場所」の記載に困るんだろうなぁ。救急隊員からは「コレ(小指)の家」と言われても,家族からは「自宅」にしてくれと言われて。ああ、今から考えると夜も眠れなくなります。昼寝しよっと。

 さて、こういう事態を私はひそかに歓迎しています。なぜっていうとあそこが屹立しているかどうかに興味があるからです。普通は自律神経の働きでしぼむはずですが、もしまだ佇立しているとすれば、ナカナカのものですね。アレの元気な人が間違って飲むと、ヘソのあたりにつきささるかもしれません。で、今日はオチがないので駄文を重ねます。

 当直医は死体におかしなところはないか調べ始めた。もちろん、犯罪に関係していないかを調べるためである。そのときは病死と判断したが、あとで刑法・民法のお世話にならないといけなくなる事態はなんとしても避けたい。医師でなくても普通の人で訴訟事をかかえていて正常な心理を保ておける人はまずまれであり、まして医師という職業はかなりメンタル面に左右されることの多い職業であり、自分にとっても患者にとっても不幸なことになるからである。看護婦があるわけもない血圧を測るべく努力しているのを横目で見て、「瞳孔散大7の7」と独りごちてから下半身を見た医師は、一瞬そこに大木を見たかと思った。彼の故郷の、子供のとき根のまわりでよく遊んだ巨きな屋久杉の勇姿が心の深奥からふいに浮き上がってきたのである。医師は虚を衝かれ、思わずうめいた。

 「バイアグラ、灰ヤグラ、ナンヤコラ〜」

 


注:バイアグラ自体はかなり安全ですが、虚血性心疾患に使うニトログリセリンなどの硝酸塩と併用すると致命的な血圧低下を招きやすく、ニトロを常用していない人でも高血圧・肥満・喫煙などの心臓病の危険因子を持っている人に危険度が高いのです。最近は硝酸塩との有害な相互作用のない代替薬(Vasomax, MUSE)も開発されつつあります。
 

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