タバコでハゲマス

1998年11月8日


 

 タバコに含まれるニコチンはきわめて強力な血管収縮物質です。血管壁にあるアセチルコリンレセプターを刺激して小動脈の収縮を起こし、これにより組織の血流は低下するのですが、特に皮膚など生命維持に対する重要性の少ない部分の血流低下が目立ちます。実際、吸い始めると皮膚温がみるみるうちに4〜5度も低下するというショッキングな実験報告がありますし、妊婦がタバコの煙を吸うと胎盤の血管も収縮して胎児はそのときキュッと痙攣するのが超音波で見られたという報告もあります。

 タバコを愛用している母親から生まれた子供のIQは10程度低いというアメリカでの統計があります。もっともこれは後に、タバコを吸う母親の家庭は平均より教育程度が低いので、統計としては問題があるという反論が指摘されましたが。もし本当だとすると、IQが10低いということはランダムに10人集まると下から1番めか2番目に位置するということで、その子の人生にとっては非常なハンデのあるスタートになってしまいます。

 かように熾烈なニコチンですが、当然のごとく生存には全く必要のない髪の毛に対する仕打ちは苛烈で、タバコを吸っている間は毛母細胞は虚血に陥いっています。タバコの煙が胎児をキュッと痙攣させるのと同じく、すべての毛母も痙攣すると考えるとわかりやすいですね。

 高価な養毛剤の多くは「血行促進」をその薬効機序にあげていますが、冬眠している毛母にはいくら血液を流してもムダなことが多いです。あくまで現在働いている毛母さんに応援してあげる程度のもの。ロゲインのように直接毛母の細胞分裂を促進するわけでもありませんので、いかにもささやかな効果しかありません。それを唯一無二のありがたい薬のようにたてまつって、あんな高価で売りつけているのはサギに近いなあといつも感心しています(TVのコマーシャルはほんとによくできていますね)。どうせ頭皮に塗っても効いているのは長くて数十分。タバコはそのささやかな効果をいとも簡単にダイナシにします。なにせ作用時間(喫煙時間)は養毛剤の持続時間の数倍。例えるなら底に穴のあいた容器にスプーンでいっしょうけんめい水を入れているようなものです。断言してもいいですが、

「愛煙家が養毛剤を使ってもほとんど無意味」
です。

 生理的なストレスもタバコと同様の血流低下作用があります。タバコはストレスを抑えてくれるからいいのだという人がいますが、そういう人では実はタバコがイライラを助長しているのであり、一種の禁断症状をタバコが一時的に救っているように見えるにすぎないのです。やはりタバコがストレスを呼び、ハゲ増しているのですね。

 ということで、タバコがハゲを助長するという話はこのへんでおしまい。同じ父母から生まれたはずの兄弟なのにハゲの度合が違う場合、タバコの本数を比べてみてください。かなり濃い関連があると思いますよ。

「ハゲたらあかん」(引退した元プロ野球投手)

「短めってカッコ悪い」(引退寸前のサッカー選手)

 

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