腎外傷(続き)

別症例のDIP

右腎は正常ですが、左腎は外側に偏位し、腎の輪郭からは内側部分が
スムースに膨隆しているようです。これは被膜下血腫の例でした。

腎外傷の解説

腎は血行が豊富で大量出血をきたすが、治癒もしやすい(大量出血でも後腹膜臓器であるので自然に止血しやすい)。
腎盂粘膜は腎被膜より強靭で、血尿はそれほど見られない。血尿の程度は外傷の程度と相関しない
(腎茎部損傷は重大であるが、血尿を欠くことがある)。
腎周囲腔には bridging septa があり、これらに遮られた血腫は限局し、場合によっては被膜下血腫などに見える。
CTでは血腫は1月ほど高濃度のままのことが多い。
腎内動脈損傷の場合、塞栓術の効果は薄いことが多い。区域性の閉塞のみの場合は緊急手術の適応はない。
腎実質内局所の造影剤の貯留は renal intravasation と言われる。
初期は乏尿のため見られなかった尿漏が後から出現することがある。尿漏は継続増悪する発熱と腎部の圧痛を伴う。

腎深在性裂傷の場合、治療方法は確定していない。へたに腎筋膜を切開してしまうと再出血に悩まされる
ことになる。血圧の保持が困難かどうかが手術適応決定のポイント。
尿漏はドレナージの適応。もっとも感染のない場合は放置されることもある。

日本外傷研究会腎損傷分類が最近はよく用いられる。     

 I型 腎被膜下損傷                   
   a 挫傷                      
   b 被膜下損傷                   
   c 実質内血腫                   
 II型 腎表在性損傷(裂傷は腎集合管に達せず、尿漏はない)
     表在性裂傷                   
 III型 腎深在性損傷(裂傷は腎集合管に達する)      
   a 深在性裂傷                   
   b 離断                      
   c 粉砕                      
 IV型 腎茎部血管損傷                  
   a 腎動脈閉塞                   
   b 茎部動静脈損傷                 
 Appendix 1(腎周囲への血腫の広がり)          
   H1 腎周囲腔                    
   H2 傍腎腔                     
   H3 対側傍腎腔あるいは中央部            
 Appendix 2(腎周辺への尿漏の広がり)          
   U1 H1に同じ                    
   U2 H2に同じ                    
   U3 H3に同じ                    

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