腎癌(続き)

アンギオ(実質相)

左腎の上部の腫瘍の辺縁部の一部に淡い染まりがあり、嚢胞壁を示します。
中心部はほとんど染まりません。

腎癌の解説

近位尿細管上皮由来の悪性腫瘍。腎実質性腫瘍の9割近くを占める。

男子は女子の2〜3倍の発生率である。
年齢は10歳以上に見られる。それ以下では Wilms のほうが多い。
von Hippel-Lindau 病の 30-40%に合併(しばしば両側性・多発性)。

組織上も肉腫に類似。血管芽細胞腫にも類似する。

α2グロブリンが tumor marker であるが、陰性のものも多い。

線維性の偽被膜を有するために、大きくなっても比較的円形を保ち、腎被膜内にとどまりやすい。
ひどく大きくなっても正常腎実質を一部残すことが多く、炎症との鑑別点の一つ。

壊死・嚢胞変性(4-15%)も多い。特に、大きなものでは嚢胞変性はまれでない。
胞巣型のものに乏血管性のものが多く、内部壊死・内部出血を有するものが多い。
ただし、多房性の嚢胞を形成するものはまれ。
自然破裂はまれだが、乏血性の papillary type に多いと言われる。

2割は乏血性。
特に3cm以下のものや、組織学的に乳頭状腺癌・管状腺癌・肉腫様のものに乏血性のものが多い。細胞型では granular type が多い。
まれに周囲に膠原線維の増生をみることがある。stage の低いものが多いために予後は一般に良好だが、未分化型のものも多い。

乳頭状腺癌は約 5%とされ、乏血管性で辺縁明瞭で予後も良い。

血流の非常に豊富な腫瘍では、腫瘍血栓がなくても腎静脈やIVCの拡張が見られることがある。
また、比較的低吸収となり腫瘍血栓に似ることもある。
parasitic blood supply は被膜内に限局していても起こりうるので、
腎外枝からの栄養血管の存在は必ずしも腎外進展の証拠とはならない。

下大静脈腫瘍塞栓は切除可能でさえあれば、予後に影響を及ぼさない。
腫瘍血栓内に多数の flow void を認めることがある。
血栓の頭側端の位置が術式を決定するので重要。

CTでは造影しないと等吸収のことも多い。CTでは被膜内に限局していても(T2)、
周囲の浮腫や炎症性変化などのために
脂肪織の不鮮明化や網状構造の出現などにより、T3と判定しやすい。

MRIでは周囲の血管拡張がよく見えることがある。

石灰化は10%程度に見られ辺縁以外の部位に多いが、辺縁型の石灰化もある。
出血巣の凝血によりHDAを示すこともある。

erythropoietin の産生や類白血病反応などの造血異常を見ることがある。

肺・リンパ節・肝・骨・副腎・脳の順に転移しやすい。縦隔リンパ節転移もまれではない。
肺転移のあるもの(特に cannon ball を呈するもの)は骨転移が少なく、骨転移の目立つものには肺転移が少ないと言われる。
原発巣切除後、かなり後に転移再発することもまれでない。

両側性腎癌は同時性のものと異時性のものとがあり、8割近くが同時性。
同時性のもののほうが他臓器転移率がやや低く5年生存率も高い(7割越える)。

増大速度は大きさに関係なく 0-11mm/年という報告あり。

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