03.10.25(土)

 


     11万と7300ヒット! どうもありがとうございます。

    ◆画像診断を考える
     松居慶子さんの「Kappa(河童)」という曲を聴きながら、全然関係のない話をします。トップページにある本の解説です。

     「画像診断を考える」(西村一雅、南 学、下野太郎;秀潤社)
     これは私の大学の優秀な後輩の一人である下野先生が彼の師の”仙人”西村一雅先生を世に出そうと企画した本です。西村先生は京大の画像診断医のほとんどの人(私も)が目標とした”仙人”というか”生き仏”というか、とても偉大な方ですが、研究者ではないので関西以外ではほとんど無名です。”仙人”とはこのような実力はすごいのに自分はほとんど世の中とは関わりを持たずに生きている人への敬称です(これも下野先生の創作だったと思います)。南先生は東大の助教授として学問的にも臨床でも非常に優れた方で超有名な方です。私の高校の1年上の先輩ですが、残念ながらお話をしたことはありません。
     そういった本の内容とは関係のないことはさておき、本書は「画像がすごく読めるドクター」たちの画像診断の勉強法を公開するノウハウ本です。これらの方々の実力はひとえに多量の勉強量に支えていることが実証されています。王道は残念ながらないということですね。
     しかし、私の心配の一つはこれらの「画像が読めるドクター」方の実像を知らない人たちの反応です

     知っている人はじつに幸福です。このくらいのレベルのドクターになるとフィルムをシャウカステンにかけた時点で異常がすべてわかりますので、すぐに思考に入り、非の打ち所のない所見がすいすいと作成されるのです。この過程を一度でもごらんになった方は驚愕されるはずです(ほとんどの人は見ていても気が付かないくらいの自然な過程でもありますが)。実際に相談を持ちかけた他科の医者の中には、フィルムをかけた時点ですぐに画像診断医がズバズバと異常を指摘し、カルテも見ていないのに患者背景を当て、考えてもいなかった疾患の名前を1つあるいは数個候補に挙げるのを体験すると、すんなりと”入信”なさる方がおられます。なにせ何日も考えているのにわからなかった症例があっさり白日のものに晒されるのですから。よくあたる占い師のようなものです(自分の病院の画像診断医ならタダです)。
     このくらいのレベルのドクターのいる病院は少ないので、一般に放射線科医の地位は低く見られがちです。しかし、爪を隠した能あるタカ(仙人)もじつは少なくないと思われます。実力を知らないで放射線科をコキおろす他科の医者もたくさんいます。「あいつら写真だけ読んでラクしやがって。あんな奴らイラン」と言う方もおられます。しかし、我々のような画像しか読まない医者が生存している事実は、治療に忙しい医者が画像を読めない(実力がないということより、時間的余裕がない、あるいは患者に感情移入しすぎるあまり)現状があるからです。実際に我々の仕事はどんどん増えています。この背反する現象はどちらも放射線科医になりたいと思う若い人が減っている原因であるのが悔しいですが。
     これらのドクターの存在を知らない他科の医者がこの本を読むわけはありませんし、読んでも信用しないでしょう。これは医学生や若い放射線科医にも言えることで、とにかく実物を見て欲しいですね。
     ま、これらのスーパードクターの実在(存在の事実と所在)を示したというだけでもこの本の価値はあったと私は思いたいですが。


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