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◆読書
「かぶき大名」(海音寺潮五郎;文藝春秋)
短編集です。収録された「男一代の記」は無名の薩摩藩士中馬大蔵(ちゅうまんおおくら)の話。この人も全然知りません。「酒と女と槍と」の次に面白かったですね。
底抜けのバカ家来である大蔵を藩主島津義弘がこよなく愛すさまが面白いです。最初は嫁取りの話なのですが、藩主が見初めて妾にしようと大蔵をつかわせたのですが、このバカ藩士、その村娘をちゃっかり嫁にします。
「どこの娘だった」と義弘に訊かれた大蔵、
「わしの嫁でした」
と答えます。あきれて、笑って許した義弘が偉い。
大蔵、例の関ヶ原で「島津の退き口」を切り抜けて、義弘をかついで逃げます。食うものがなくて死んだ馬の脚をかじりながら空腹を紛らわします。藩主も空腹だから献上せよと他の藩士が言うと、
「お前あほか、藩主はかつがれとるだけや。かついでいるわしらだけが食う権利がある」
と主張して決闘を始めようとします。義弘、これも仲裁します。エライ人や。
こういう破天荒な男がしみじみとした死に方をします。ある意味、理想かも。
鹿児島出身の海音寺さんは非常に面白い人を紹介してくれたものです。そう言えば海音寺さんの卒業した加治木中学は私の父母の出身地にあります。うちの亡父の大先輩ということですね。親父もよく読んでいましたっけ。なんか妙な近親感情が湧いていたのはそのせいでしょう。