09.12.27(日) 

 


     30万 2700ヒット! どうもありがとうございます。

    ◆読書

       「「スーパー名医」が医療を壊す」(村田幸生:祥伝社新書)

       1章ごとに荒唐無稽な医療ドラマを取り上げて、その問題点を深く掘り下げています。

       第1章は「白い巨塔」。私も医学生のときに読みました。この本では「白い巨塔」のストーリーがいかにヘンかということを我々に知らしめてくれます。

       この小説では、胃ガンの術後、胸部に陰影が出て術後肺炎だろうと財前は受け持ち医に抗生剤の処方を勧め、海外の学会に行ってしまいます。それが癌性胸膜炎で術後 21日後に患者が亡くなるのです。
       術後一度も患者の容体を見に来なかったので財前は裁判に負けるわけです。里見は裁判で「術前から肺に陰影があった」と言って患者側に加担するのです。
       術前に里見は財前にこれは肺癌かもしれないとからむのですが、財前に結核のあとではないかと言われて、反論できずにすごすご引き返すのですね。あとで肺転移だと知った途端、財前にキバをむくのです。結果論で責めれば誰だって正論に聞こえます。
       なんと卑劣なやつでしょう。
       胃癌の手術をしないと食べられなくなってしまうので、肺転移があっても姑息的に手術することはあります。この点でも財前の判断の間違いとは思いませんが。
       余計な手術をしたと里見は非難しますが、じゃあ「もう手遅れなので手術はしません」と宣告するのがいいのでしょうか。里見はそれに対する決定的な治療を持っているわけではないのに「食べられなくなることがわかっていてもしょうがない。あのまま見殺しにすべきだった」と言っているのですね。
       肺転移があったとしてもそれがどのくらいのスピードで進行して命を奪うことになるのかは、たとえ術前に肺転移と診断してもわかりませんよね。じゃあ、当面問題の胃の閉塞の危険を取ってやったほうが長生きできるかもしれません。里見はそれも否定するのでしょうか。名医とか人道的とかとはとても思えません。好訴妄想の×××イに近いのではないのでしょうか。

       私が思うに、術後肺炎と間違えるほど癌性胸膜炎が急激に進行して(術直前と劇的にレ線が変化して)、わずか21日後に亡くなるってことも、あまりないように思います。普通はもっとゆっくりでしょ。21日後なら縫合不全で縦隔炎を起こして、のほうがリーズナブルだと思いますが、そうすると手術ミスということになって山崎豊子の意図とはズレてくるのでしょうね。

       ということで、山崎豊子の考えたストーリーはかなりヘンだ、と気づかされたのです。一読をお勧めします。



 

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