よくある病気 〜尿管結石〜(メディカル憩室その17)

 


 今日は尿管結石というよくある病気について。
 尿路結石というとこれより広い概念で、尿管結石の他に腎結石・膀胱結石・尿道結石を含みます。
 これらの結石は腎臓の中にある腎杯・腎盂の中で尿中の結晶成分を核として発生し成長するのです。
 結晶成分にはいくつかの種類があり、尿酸・蓚酸・燐酸・炭酸などのカルシウム塩、シスチン・キサンチンなどのアミノ酸、アンモニウム化合物などがあります。
 特にカルシウム排泄の多くなる病態では一般的に結石ができやすくなりますし、夏場などで尿量が減っても結晶成分の濃度が高くなり結石が成長しやすくなります。また、尿酸の排泄の多い痛風や白血病などの特殊な病気でも尿酸結石が多発します。

 尿路結石の中で問題になるのは尿管結石です。というのは腎結石(腎臓結石)・膀胱結石・尿道結石は痛くないからです。
 尿道結石はきわめてまれです。尿道は結石がひっかかるところがほとんどありませんし、たとえひっかかったとしても高い膀胱内圧に押し出されてしまうからです。
 腎結石も尿管に落ちない限りまず無症状ですし、膀胱結石も膀胱まで落ちてきたということは石が十分小さいということを意味し、尿道を通って排泄されてしまうことがほとんどですから出会うことはまれです。

 さて尿管結石ですが、腎杯・腎盂の中で発生した結石が尿管に落ちてひっかかるわけです。
 どこにひっかかるかというと、尿管は膀胱に至るまでに3ヶ所狭い部分が存在するのです。尿管の最上部(腎盂尿管移行部)・中下部(腸骨動脈との交叉部)・最後(膀胱の手前=尿管口直前)です。
 これらにひっかかった結石が尿の流れをせきとめますと、上部尿管・腎盂が尿で拡張します。この尿を押し出そうと平滑筋で構成されている尿管壁がはげしく収縮(痙攀)します。そのための痛みが俗に言う「結石の痛み」です。子宮も壁が平滑筋で構成されているので、この尿管の収縮の痛みは陣痛に酷似しています。出産した女性には痛みがよく想像できるようですが、結石を持たない男や出産経験のない女性にはよくわからないものです。
 結石の表面が不整ですと、ひっかかっても尿管壁との間に隙間があるので尿が流れるために上記の痛みはないか軽度です。ただし、尿管壁を傷つけるので尿管癌などの原因になります。

 さて、治療です。一般療法では尿管壁の痙攀を薬物でおさえ、尿量を増やして自然に排泄を促進させるということになります。具体的には筋注して点滴ないし経口で水分を補給するということになります。石が流れていかない場合、薬物の効果がきれるとまた痛みが反復するので、入院して継続する必要があります。2/3 はこのような治療で治りますが、1/3 ほどの人は次のステップ(外科的治療)に進みます。

 ・超音波や衝撃波による破砕
 ・尿道尿管カテーテルなどによる経尿道的結石除去
 ・外科的切除(手術)

 破砕は体外から衝撃波を与えて石を砕こうというものですが、成功率はあまり高くありません。経尿道的結石除去は破砕鉗子などを尿道から膀胱を通して尿管に入れて直接石を砕いて捕獲するものです。ちょっとばかり痛いです。外科的切除は背中をメスで開いて腎臓を開き、そこから石をつまみ出すものです。尿管の下の方なら尿管を直接切開します。

 結石が除かれたとしても同じ条件(食生活などの生活環境・原疾患を有することなど)なら、再発することがよくあります。
 尿酸結石の場合は痛風の治療をする、肉食を減らすなどの特別な配慮が必要でしょうが、一般的なそして効果的な予防法は尿量を増やすことでしょう。
 ビールもいいですがたくさん飲んでは肝臓にひびくかもしれませんので、水かお茶がベストですね。


 

 

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