家庭常備薬の話(メディカル憩室その7)

 


 最近雑誌をパラパラとめくっていると、富山の置き薬が店頭で売っているところがあり、結構繁盛しているという記事が目に止まりました。ローカルな話題ですが、今日はこれをとりあげます。

 私の実家は神戸ですが、物心ついたときから家には置き薬の箱がありました。半年に一度ほど富山から小柴さんという人が来られて、箱の中身を点検して、使った分を補充して、その分を請求して帰って行かれました。おふくろに聞くと最近もいらっしゃっているそうです。そんなわけですから、小さい頃からたびたび箱の中身を見て、どの薬にはどんな成分が入っているということを眺めていて、そのうち憶えてしまいました。これが医者になったきっかけの一つかもしれません。ま、最初は小柴さんのくれるハトロン紙で作る紙風船が目当てで箱を開けていたわけですが。

 実家にあった置き薬は風邪薬とか胃腸薬・止瀉剤・(乗物)酔い止め・目薬・湿布剤などが主で、医者の目で見てみると我々の使う薬(医家用)に比べて成分は同じでも含量がだいたい半分なんですね。雑誌にも「効き目がマイルド」と書いてありましたが、それも当然です。

 で、この置き薬があったせいか、私や弟の小さいときはほとんど医者に行った憶えがありません。過敏性腸炎でしょっちゅう下痢はしていたのですが。最近、当直をしていると軽い風邪くらいでよく病院にくる方が多いなぁという感じがしますが、きっと置き薬のない家庭なのでしょう。富山の薬売りの来ない家庭の方は、普段から救急箱の中身を自分で点検して足りない薬は補充しておくといいです。病院でもらった薬も名前と成分・量とを聞いておき、この箱にしまっておけばいいのです。え、救急箱がない? 論外です。早速買いましょう。100円ショップで売っている大きめのタッパーやプラケースでいいですから。どちらかというと直射日光は避けたいので、不透明なものがいいのですけど。

 薬の名前や成分は箱を見るとわかるし Web でも検索できるのでいいが、使う量は難しいって? 特に子供が困る?
 そんなに難しくありません。子供に必要な量はだいたい大人の必要量の

 4×(年齢)+20 パーセント

です。ほら、ちゃんと 20才で大人(100%)になるでしょう。

 ただし、子供に使えない薬もありますのでご注意ください。風邪薬や胃腸薬は基本的に使っていいです。でもアスピリン(アセチルサリチル酸のことです。名前からピリン系だと思っている人がほとんどですが、ピリン系ではありません)は安くていい風邪薬(解熱剤・鎮痛剤・抗血小板薬)ですが、最近は小児には使わないほうがいいと言われています。ごくごくごくごくごくごくまれにライ症候群という致命的な疾患の引き金になりますから。インフルエンザにボルタレンもよくないようです。ということでアセトアミノフェンが小児には安全です。

 富山の置き薬、インターネットで販売すれば結構もうかるかもしれません。小柴さん、考えませんか。他の薬剤師の方もいかが? でもクロロホルムやヤバイクスリは売っちゃだめだよ。


 

 

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