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<第二夜>ハゲの話について

 

ハゲまして



1997年1月20日


 「天にまします我らが髪よ、どうか願いをかなえてください」
 「ではますますハゲめ」
 「そんな!!これ以上ハゲてはハンサム(半分寒い)ではなくなってしまいます
  ああ、神も仏もないものか・・・」
 「仏はホットケぃ」

 ということで、今日はハゲの話です。はげている人、はげる予定のある方、予定はないがという未定の方も聞いてください。

 ハゲ --> 禿頭(とくとう)--> 時任三郎はタラコ唇 --> タラコスパおいしいな --> スパは伸びる(ナニガダ!) ということで、ハゲとは要するに伸び悩んでいる髪の毛をさします。髪の毛とは頭皮にある毛母細胞がつむぎ出す糸のようなものですが、それ自体には生きている細胞は含まれていません。ゆえに、「髪に栄養を」というのは「死体に点滴をする」のと同じくらい奇々怪々な言葉なわけですね。で、毛母細胞はいつも活動しているわけではありません。彼女は数年せっせと子作りにハゲ無、いやはげむとまた数年冬眠なさいます。結構今風の気紛れな母親です。冬眠している間に子供たる髪の毛が虚空に巣立っていってもぐうたら寝ていることもしばしば。「ハンサムな王子が起こしに来る」いや「半分寒いのがお腰にくる」まで眠り続けるのです。

 では、どうすればハゲないのでしょうか? それは毛母細胞をいたわること。彼女はせっせと血液中の栄養を「肉」に変えています。ですから栄養を与えること、これがまず一点。次にせっかく生えた毛を抜けにくくすること、これが二点め。最後に髪の合成を効率良くすること、これが今回の主要なテーマです。
 栄養を与えるというのは、血行を促進し、血液で運ばれるアミノ酸・脂肪などの栄養を増やすわけです。従来からある養毛剤や頭皮のマッサージなどは血行促進を狙っているものがほとんどです。でも「髪は血余」というように血液自体に栄養が含まれていないとヌケます。無理なダイエットは禁物です。
 毛を抜けにくくするにはまず頭皮を清潔に保つことですね。毎日頭皮を洗う。髪を毎日洗う必要はないのですが、頭皮が脂でギトギトになるとホコリと混じってセメント状のものが頭皮を覆い、毛穴つまり毛母細胞が病的環境に置かれます。油性(ユセイじゃなくてアブラショウ)の人は毎日洗いましょう。石鹸が一番です。中でも刺激の少ない牛乳石鹸がいいでしょう。シャンプーの類は製法や成分から言うと台所用合成洗剤と大して変わらず、かえって頭皮にはよくありません。髪を一生懸命洗わなくても、頭皮を集中的に洗うことにより髪は副次的に適度にきれいになります。指の腹でよーく皮膚をマッサージしながら洗いましょう。恥ずかしながら、筆者は坊主刈りにしていた中学生時代、毎日「朝シャン」をしていました。親には「頭を洗うと気が引き締まる」と言ってごまかしていましたが、本来の目的は頭皮のマッサージです。このおかげか今のところハゲはありません。

 さて、ここまでは普通の話です。自分で言うのも何ですが、医学博士の端くれとしては、ここで少しそれらしい話をせねばかっこがつきません。養毛剤って高いですよね。その割に効果がない。ところが、成功すればノーベル賞ものと言われた「毛はえ薬」が最近出たのです。これは1996年春頃から米国をはじめ十数ヶ国の薬局で簡単に購入できるようになった、一般名ミノキシジルという薬です。商品名としては「ロゲイン」(栄養ドリンクではありませんが、国によってはリゲインともいう)というものですが、もともとは高血圧の患者を治療する薬、つまり降圧剤です。治験中に唇に「毛がはえてきた」という「副作用」が出た患者があり、降圧剤としてより毛はえ薬として有名になったのです。こういうものって副作用じゃなく、副次的効用と言ったほうがよいようですが。ただ飲む薬だったもので、変なところにはえたりした人もいたらしいですから、やっぱり副作用なのかな。で、これを毛はえ薬として使う場合は2%から5%くらいに薄めた液を使い、患部(って言わないか、うーん、そう、寒部だっ!)にスプレーするそうです。作用機序は毛母細胞のDNA合成促進とのことで、どうです、いかにも効きそうでしょ。少なくとも塗った部分の血行を促進するだけのイジョーに高価なへっぽこ養毛剤よりは効くようです。血行をよくしても毛母細胞がへたっているためにこれらのクスリがちっとも効かない人でも、こいつなら効くかもしれません。ただし、日本では薬として認定されておらず、販売も禁止されてます。そのかわり自分自身の使用に限っては個人輸入が認められています。一回に24本以内とか、他人に譲渡(タダだろうがカネをとろうが関係なく)しては犯罪になるとかの制限はありますが。
 個人輸入ときいてビビるあなた、インターネットで国内の個人輸入代行業者に頼めば、誰でも入手できますよ。興味がある人は下のボタンをクリックしてみてください。

 今回はオチがありませんね。関西生まれの筆者としては何でもオチをつけないとオチつかないので、シャレで無理矢理(品位を?)落とします。

「どうしてお父さんははげてないの?」
「それはね、髪のミノキシジル(かみのみぞしる)だよ」    エー、オアトガヨロシイヨウデ
 

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