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<第七夜>JRにもの申すぅ〜について

 

JRにもの申す



1997年5月19日


 人間、あまり怒ると体によくありません。しかし、わかっちゃいるけどやめられないのも、また人間のサガでもあります。

 わたしは関西は湖西線というローカル線の沿線に住んでいます。琵琶湖の西岸を南北に走る線です。どうしてこんなところに引っ越したかというと、神戸人という人種は、「南に海、北に山」という一組の行動基準がないと、途端に方向音痴になってしまいます。私はうちの母親ほど地下街を苦にしたりしませんが、大阪の街のように、だだっぴろい地上都市では心のどこかでいつも山の位置を探し求め、たとえそれが見えてもそちらの方角が北とは限らないことにまた不安を覚え、とても暮らしていけません。いくら地上といっても山という目印がないと巨大な地下空洞と同じで、この点、うちの母親を笑えません。というわけで、東に水(琵琶湖)、西に山(比叡山)という神戸を彷彿とさせる(南北が東西に置き換って得いますが)比叡山の麓の坂本という町に移り住んだのが、7年前です。織田信長の比叡山の焼き討ち、明智光秀、豊臣秀吉も城主となった坂本城などのあるいわゆる歴史街道であり、その分、住むのにはやや不便ですが、引っ越し当初よりはだいぶん便利になりました。

 しかし、通勤に使用する湖西線のローカルぶりは聞きしにまさるものでした。今でもそうですが、スーパー特急「雷鳥」がネックなのです。「雷鳥」は大阪・京都と金沢などの北陸の都市を結ぶ特急列車で、琵琶湖を湖西線と北陸本線との2ルートを交互に使い分けて通り過ぎます。湖西線経由の雷鳥と北陸線経由の雷鳥が1時間に1本ずつあるわけですが、湖西線というのは風雨に対して特に弱く、またそれが雪になると手も足も出なくなるのです。この遅れがちの特急を優先するために(申し遅れましたが、湖西線は上下1本ずつの「片道単線」です)、我々の利用する各駅停車が多大な迷惑を被ります。冬の寒い日など、いつくるかわからない雷鳥を寒いプラットフォームで待ち続ける通勤客や学生が、まるで電線にとまったうらぶれたカラスの群のようです。誇張ではなく、湖西線のプラットフォームは高架になっているので、遠くからこのありさまがよく見えます。そしてようやくやって来た「雷鳥」は遅れを取り戻すために高速で駅を通過します。よく見えないこともありますが、怒りに燃えアドレナリンのために活性化されたわたしの目には、雷鳥内の客車の様子がよく見えます。がらがら。雪の日は1車両あたり2〜3人しか乗っていないことがザラです。午前中の雷鳥の上りは北陸に住んでいるサラリーマンが出張のために利用することが多いのですが、大雪だと列車に乗れなかったり、また帰りの困難を考えると出張を取りやめることも多いためこうなるのでしょう。雷鳥が雪混じりの突風をフォームで待っている客に吹き付けたあとに、遅れていた各停の列車がやっとこさ来るのですが、当然すごい混雑であり、確実に乗れるのはフォームで待っていた人の半数程度のことがあります。このときフォームにはすごい殺気がただよいます。死人が出ないのが不思議です。

 全車両で数人しか乗っていない列車でも特急(つまり料金払い戻しの対象)である限り、湖西線沿線に住んでいる数千人〜数万人のまじめな通勤客や学生に過大な迷惑をかけているのです。こちらにも払い戻しをしてほしいというのが人情でしょう。

 JRは土地の売買で借金を減らすといっていますが、とうに焼け石に水状態になっています。その土地も日本全国あわせてもせいぜい40平方キロくらいで、6km強四方の土地ということです。広いようでもあり、狭いようでもあります。そのかなりの部分は不便な場所の野原であったりしますので、大きな期待はできません。すごい赤字ですが、JRには危機感はありません。いつも国に尻をふいてもらってきたので、今回も開き直ってケツをふかせる気でしょう。

 どうせならついでに浣腸して宿便を出してはいかがでしょうか。なにはともあれ、人減らしです。ぜんぜん仕事をしないオエライサンを名誉総裁に就任させましょう。任期はその50歳の誕生日から退職期限まで。複数OK。地域別に名誉総裁を作ればいいのです。そして、その管区で15分以上の遅れが生じたときには地方のTV局で会見を行い住民にお詫びをし、辞表を提出します。ま、タクシー会社の「事故担当重役」みたいなものですが、退職金カット、年金カットというのがミソです。これで即座の人減らしと長期支出の軽減というダブルメリットがあります。え、その人がかわいそうだ? いえいえ、彼には名誉があります。今までタダメシを食らってきた給料泥棒、もとい、ただのオッサンが「名誉総裁」、そしてTVでの「名誉のハラキリ辞任劇の主役」です。彼が亡くなった後も家族は誇らしげに言うことでしょう。

「うちのお父さんは第16754代滋賀県湖西第156地区JR名誉総裁だったのよ、いや16745代だったかしら・・・ 部下のミスを男らしく責任を取って辞めたんだからたいしたもんだわ」

 どうです、すごい名誉でしょ。家族も本人はもちろんその子孫も未来永劫にわたって浮かばれます。「おじいさんが名誉総裁だったのだから、ボクもがんばらなくっちゃ」と言ってグレずに真人間になることでしょう。これでTVを見た住民のフラストレーションは解消され(ホントカ?)、JRというのはなかなか大変な職場という同情も集められ(ホントナノカ?)、一石三鳥くらいの効果は保証します(ホントニホント・ナ・ノ・カ???)。

なお、文中の固有名詞は架空のものではありませんが、内容は半分以上ギャグです。
 

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