遠隔画像診断医師やすきー(岩崎康)の画像診断雑記

以前からある頚部痛の高齢女性

 

80歳を超えた高齢女性で、かなり以前からの頚部痛(発症時期や発症機転は不明)があるそうで、後屈すると痛みが生じるようです。自発痛ではないです。

 

CT が依頼されました。

 

cd01

 

横靱帯(十字靱帯の横走部分)に石灰化があります。

 

ああ、あれね。

 

crowned dens syndrome かあ。

 

 

crowned dens syndrome

 

ちなみに冠状断を作ってみました。

 

歯突起の頭を王冠(というかヅラ・・・ヘルメット?)のように淡い石灰化が取り巻いています。

 

cd02

 

昔はこれを頚椎正面像で見て、王冠のようなものをかぶっているという意味で、crowned dens と呼んだわけですね。単純写真で見えたということで、相当濃かったものと思われます。

 

今はCTでよく見られるようになってきましたが、たいていは横断像のみなので、ホントウに歯突起がかぶっているかはわかりません・・・つまり crowed でない可能性もあります。

 

この疾患の本質はこの十字靱帯のピロリン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトの沈着が引き起こす偽痛風(結晶性関節炎)ですね。

 

ですから NSAIDs が著効します。

 

症状が消えれば数か月〜数年で石灰化は消失するとも言われています。

 

 

それが答え?

 

症状は急激発症ではありません。自発痛もないです。

 

この病歴から crowned dens syndrome は否定的ですね。

 

この人の場合は単なる退行性変化による靱帯石灰化と思われます。

 

cd03

 

十字靱帯石灰化のほかに、変形性頚椎症が見られます。おそらくこのための疼痛でないかと考えました。

 

 

crowned dens syndrome と crowned dens 像

 

syndrome とは症候群。症候群とは症状群とも言い、特徴的な症状を呈するもの。

 

症状がない syndrome とは語義的に矛盾しています(最近、Kasabach-Meritt 症候群も Kasabach-Meritt 現象に格下げになりましたよね )。

 

今回の場合、症状のないものは単に crowned dens 像と言いますが、前述したように必ずしも crowned でないこともあるので、単に「十字靱帯の石灰化」と書けばいいと私は思います。

 

(Y)o\o(Y)

 

症状のない crowned dens 像はよく見ます。ほとんどは加齢による退行変性が多いですが、AAD などに関連していることも多いです。一種の防御反応なんでしょう。

 

典型的な症状(急性発症の頚部痛)のあるものは crowned dens syndrome でいいわけですが、こういう有症状例の中にも従来から石灰化のあるものが含まれている可能性がありますよね。

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