遠隔画像診断医師やすきー(岩崎康)の画像診断雑記

脂肪腫?

fft

 ときどき点状の高信号が腰椎レベルの横断像で硬膜嚢内の後半部正中に見られることがあります。
 終糸脂肪腫と書く人が多いですよね。

 

 ほんとうに終糸にあるのかは確認が難しいです。
 馬尾と終糸と画像上どうやって鑑別するんだ?・・・無理でしょう。

 

 それに、たまに皮様嚢腫(だいたい球状、位置は一定しない)が見えていることがあるので要注意です。⇒ うそうそ・・・こいつはまれなので、まず見ることはありませんけどね。

 

終糸の脂肪沈着では?

fft

 ついでに矢状断も載せておきます。

 

 終糸であることは正中線上にあることでまあ納得するとして、これが脂肪腫なのか迷入した脂肪織なのかはどうやって区別するのでしょうか。

 

 昔、脊椎脊髄ジャーナルの特集で「直径 2mmまでは脂肪沈着、2mm以上は脂肪腫とする」と書いてありましたが、科学的根拠はないと思います。

 

 仙骨部の脂肪脊髄瘤の場合の「脂肪腫」も開裂部から迷入した脂肪組織によるただの脂肪塊なわけだから、終糸の場合も脂肪腫でいいのかなとも思います。

 

 脊髄係留がない場合は、たいそうに書いて精査されても患者が迷惑なので、「終糸の脂肪沈着」と言い切ってもいいかなと思います。

 

などと悩みながら、実際の臨床で、2mmもない場合は、所見には「終糸に脂肪沈着あり。脊髄係留はないので無視できます。」と書いてしまいます。

 

CT でもよく見ます

 

fft

 腹部 CT でもよく見られるので、見つけたらとりあえず「終糸に脂肪沈着あり。脊髄係留はないので無視できます。」と書いています。

 

 これは依頼医(内科医や外科医が多い)に対して、「ここまで見ているのだぞ」というハッタリでもあります。

 

 普通の内科医や外科医はこんなとこまで見ておられません。

 

 さすがプロだなと思わせるうまい手じゃないでしょうか。

 

脊髄脂肪腫について

 ちなみに私のノートから。

 

 終糸以外の脊髄脂肪腫も含まれていますので、ご注意。

 

*** 脊髄脂肪腫 lipoma

 

好発は終糸領域。多くは硬膜内に位置し、脊髄後面に付着していることが多い。普通軟膜下腫瘍の形をとり、脊髄を腹側に圧排することが多い。
脊椎癒合不全・繋留脊髄・髄膜瘤などを伴う。
脂肪腫の係留により低位脊髄円錐 tethered cord が見られやすい。というよりほぼ必発。しかし水頭症やキアリ奇形の合併はない。

 

腫瘍は線維性被膜により分葉化していることが多い。
脂肪腫と脊髄の間にMRIで線状の低信号が見られることがあるが、chemical shift artifact であり実際の境界はない(線維性被膜を有するものも見られる)。

 

新生児の腰仙部に皮膚異常(特に皮下腫瘤)がある場合、20%に脊髄脂肪腫がある。
一度症状が出現した場合は手術をしても症状の回復は困難。

 

血管組織の増生を伴うものは血管脂肪腫という。

 

まれに石灰化・骨化を認む。

 

一般に dorsal・caudal・transitional・filar の4型に分類することが有用。
 dorsal type は皮下の脂肪腫が破裂部(硬膜の欠損部を含む)を介して脊柱管内に及び背側から脊髄に付着する型。手術は比較的容易。
 caudal type は脂肪腫が尾側から付着する型。
 transitional type は上2者の移行型。最も手術が困難。
 filar type は終糸そのものが脂肪腫の像をとる。ただし、正常人の5%に終糸に脂肪沈着を見る。

 

腫瘍近傍に限局した空洞形成をみることもある。

 

脂肪腫と軟膜との結合は強固なので、一般に手術にて全摘することは困難。手術の主な目的は脂肪腫の摘出ではなく、係留された脊髄の解放である。

 


スポンサードリンク