遠隔画像診断医師やすきー(岩崎康)の画像診断雑記

一見正常なMRAだけど

amca

 MRI は正常でした。

 

 MRA も正常・・・ん?

 

右中大脳動脈が

amca

 あれ、右の中大脳動脈が2本あるじゃん?

 

 どっちが本物?

 

少し回転してみました

amca

 ほうほう・・・

 

横向き〜

amca

 そこに来るのね。

 

 つまり、上の方が前頭葉外側部を、下の方が後ろの方(頭頂葉など)を、担当しているわけだ。

 

 ということは・・・アレだ!

 

副中大脳動脈 accessory middle cerebral artery

 

 答えは副中大脳動脈。

 

 我らがバイブル、『脳・頭部血管の Normal Variations』(田之畑一則;メディカルビュー)から抜粋しますと、

 

 

  •  副中大脳動脈 accessory middle cerebral artery とは、本来の中大脳動脈とは別に、中大脳動脈領域に分布する血管が前交通動脈近傍の前大脳動脈から分岐する破格。
  •  脳血管撮影上の頻度は約 0.3%。
  •  中大脳動脈分岐部領域のうち、主として前頭葉外側下面を栄養する。

 

問題は・・・

 

 問題は、これと重複中大脳動脈 duplication of middle cerebral artery との鑑別。

 

脳・頭頚部血管のNormal Variations脳・頭頚部血管のNormal Variations
田之畑 一則

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 同じく、この本によると、

 


 重複中大脳動脈とは、本来の中大脳動脈とは別に、中大脳動脈領域に分布する血管が、本来の中大脳動脈と前脈絡叢動脈分岐部との間で、内頚動脈から分岐する破格。

 

 どっちが本幹と見るかによって見解がわかれそうですが、副中大脳動脈の場合は、中大脳動脈分岐部領域のうち、主として前頭葉外側下面を栄養する、というのが唯一の鑑別点ですね。

 

 それ以外は重複中大脳動脈というわけです。

 

 

 

 独り言です。

 

 どちらも「2本で1本分」なわけですね。

 

 私の感覚では、重複というと「1+1」、副というと「1(主)+1/2(副)」のような感じがするのですが。

 

 この場合は、流域は増えておらず、「1/2+1/2」に近いわけだから、分裂中大脳動脈とでも呼んだ方がワタシ的にはしっくりきます。

 

 そもそも、重複中大脳動脈と副中大脳動脈との区別に意義があるのかどうか・・・

 

 

 

 

脳・頭頚部血管のNormal Variations

 

 

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 え〜、ちょっと脱線を。

 

 この本は非常に役に立つ本です。

 

 2000年に出た本で、それまで「臨床画像」誌に3年間にわたり連載していたものをもとに大幅に加筆したものです。

 

 脳血管写(DSAが多い)の本で、MRA や 3D-CTA に特化しているわけではありません。

 

 ただし、脳血管の破格に関しこの本より詳しい和書はないと思います。

 

破格を知っていないととんでもない恥をかくことがあるが、それが防げる
破格を知っているだけで他科の先生や上司に見直される
この本に載っていない破格は論文のタネになる
この本に載っている破格でも地方会、研究会のネタくらいにはなる
このようなホームページをつくれる ^^;

 

 ということで、各人が買うべきかと言われるとちょっと賛同しにくいですが、読影室に1冊はないといけないリファレンス本です。

 

 少なくとも私にとってはお宝本です。

 

 内容は古びないので、改訂がそんなに頻繁に出る種類の本ではないです。

 

 まだ在庫はあるようですから、欲しい人は売り切れないうちに入手してください。

 

 できたら、DVD でもついていれば最高なんですが。次回の改訂に期待しましょう。

 

 

 

 

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