皮下腫瘤
左下腿部内側の皮下の腫瘤についての精査。
2ヶ月前に打撲したという。その後腫脹が軽快しない。
何でしょうか。
横断像もあります
横断像です。
先ほどと同じく、左がT2強調画像で、右がT1強調画像。
血腫
放射線科医であれば、内部が不均一ながらも、T1強調画像で高信号ですので、血腫だろうなと考えるはずです。
あたりです。
ただ、普通の皮下血腫ならこんなに長く持続しませんよね。
腫瘤の中身なんて、器質化の進んでいない、いかにも凝血塊という顔をしています。
なんとなくイヤな予感がしてきました?
皮下組織の中に存在し、辺縁を厚い低信号被膜で覆われているものと言ったら・・・・?
答え:Morel-Lavallee lesion
答えは Morel-Lavallee lesion モレル・ラヴァリー病変 。
Lavallee の2つある e のうち最初の e はアクサン・テギュがついています。
19世紀に最初に報告されたので、こういう大層な名前がついているのです。
この病変は外傷後に生じる皮下の閉鎖性剥ぎ取り病変(closed degloving injury)。
皮下組織が裂けて、できた空間に血液やリンパ液が貯留します。
内部に脂肪塊が浮遊することがあります。
普通の皮下血腫ならこんなに長く持続しないですが、こいつは違います。
皮下組織が裂けて生じた大きくて内圧の低い空間であるし、ヘモジデリン沈着のある被膜もできてしまったために、線維芽細胞や炎症細胞が中に入り込めず、修復が全く進まないのです。
AJR にもありました。⇒ MRI of a Morel-Lavallee Lesion
皮下にできた滑液包に繰り返し出血が生じるとこういう像になるかもしれませんが、外傷前に存在していたかどうかが鑑別点になります。
それに滑液包炎の場合はもともと大量の滑液が存在するため内圧もそこそこあるので、出血はすぐに止まるため少量で、しかも大量の滑液に希釈されて、内容はこんなにコロコロした凝血槐にはなりません。
鑑別疾患
私の印象ですけどね・・・
皮下血腫 | Morel-Lavallee | 出血した滑液包炎 | |
---|---|---|---|
形状 | 不整形 | 壁厚の嚢胞 | 壁厚の嚢胞 |
内容液 | 新鮮血液 | 100%血液〜凝血槐 | 希釈された血液 |
境界 | 不鮮明 | 明瞭;端はテーパー状 | 明瞭;破裂すれば不鮮明 |
周囲 | リンパ管拡張 | 正常皮下組織 | 破裂すればリンパ管拡張 |