民族と文明で読み解く大アジア史 / 宇山卓栄
公開日:
:
最終更新日:2023/02/27
読書
民族という視点からアジアの歴史を明解に解説してくれる本。
著者の宇山氏の記述はいつも的確で明解です。
わかりにくいシナや周辺異民族との兼ね合い、中央アジアの民族の変遷などがよくわかります。
*
たとえばチャイナについて、北方遊牧民には武力でかなわなかった漢民族が負け惜しみで作ったのが中華思想という説があります。
著者は「北方遊牧民には高度な文明の創造力があり、漢民族にはそのような想像力がなかったために征服された」と言います。
つまり、文武両負けということです。
漢民族は同時代の異民族に武力で叶わなかったのに加え、過去に自分たちを支配した異民族の作った文化を持ち出してうそぶいているという話です。
漢民族の国はたいていは王制であり、血縁主義で身分は固定されて有能な人物が台頭する機会はなく、いわば武力による政変でしか国体が変わらず、進歩もありませんでした。
代が変わるたびに愚鈍な王が繰り返し出現し、国は弱体化していくのが常でした。
こういうことを防ぐための強力な統治機構を作り上げたのは実力主義の異民族であるわけです。
たとえば均田制を始めたのは北魏ですし、科挙を行って実力のある人材を抜擢したのも隋などの鮮卑族(モンゴル系)ですしね。
*
このような「一般常識はじつは非常識」的な鋭い指摘は随所に見られます。
イケガミ的ウソくさい「一般」常識などは安直に仕込まないで、真の歴史を知るのに役立つ良書を読みましょう。
ということで、この本は非常にお得な価値のある書籍と思いますので、真にオススメいたします。
###
関連記事
-
-
黒を愉しむ 万年筆インク6色セットつき 万年筆のある毎日
ついこの前、「青を愉しむ 万年筆インク6色セットつき 万年筆のある毎日」をご紹介しましたが、
-
-
マグロは時速160キロで泳ぐ―ふしぎな海の博物誌 (PHP文庫) / 中村 幸昭
マグロは時速160キロで泳ぐ―ふしぎな海の博物誌 (PHP文庫) 中村 幸昭 P
-
-
叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」 / ひろゆき
★★★☆☆ ひろゆきの本はいろいろ出ていますが、この本は「世の中の真実」について書いたとい
-
-
だから、新書を読みなさい / 奥野宣之
★★★☆☆ 内容 2009年に出た本。残念ながらこの本は新書ではなく単行本です。 ある
-
-
至高の音楽 (PHP新書) / 百田 尚樹
至高の音楽 (PHP新書) 百田 尚樹 PHP研究所 2015-12-16 売り
-
-
だれが中国をつくったか 負け惜しみの歴史観 (PHP新書) / 岡田英弘
だれが中国をつくったか 負け惜しみの歴史観 (PHP新書) 岡田 英弘
-
-
ぐっとくる? / 安田 佳生
ぐっとくる? 安田 佳生 サンマーク出版 2011-02-14 売り上げランキン
-
-
Linux100% Vol.18
Linux100% Vol.18 (100%ムックシリーズ) 晋遊舎 2012
-
-
仕事は、かけ算。20倍速で自分を成長させる / 鮒谷 周史
仕事は、かけ算。20倍速で自分を成長させる 仕事は、かけ算。 ~20倍速で自分
-
-
仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること / 鈴木貴博(2)
仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること (講談社+α新書)