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この厄介な国、中国 / 岡田 英弘

公開日: : 読書

この厄介な国、中国 (ワック文庫) この厄介な国、中国 (ワック文庫)
岡田 英弘
ワック 2001-11
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★★★★★(さすがの碩学)

東京外大名誉教授で、宮脇淳子さんのご夫君の岡田大先生の卓見に触れられます。

タイトルからは嫌中本のようですが、実際の内容は違います。

目からウロコがビームのように噴出することでしょう。

中国人にとって外交や戦争は個人の欲望達成のための道具

一番大事なのは自分であり、自己保身のためなら他人が死のうがどうでもかまわないそうで、鄧小平のしかけた中越戦争などの例が載っています。

中国は20世紀になるまで国家はなかった

最初は意味がわかりませんでしたが、中華民国以前の国はすべて皇帝(や王)の私物であり、国家という概念はなかったということです。

だから国境というはっきりした概念もなく国境らしきものは曖昧なもので常に変動していました。

皇帝の有するのは流通システムで、そこから自分自身も交易をして利益を得ていたというのです。商売人の長ということですね。騎馬民族も同じ。

漢族は黄巾の乱以降 三国時代に滅んでしまった

後漢まで栄えた漢族は黄巾の乱以後人口は戦乱や飢餓で 1/10 以下に減少。文化も消滅し、漢族としての根拠を失ってしまった。

その後、北方から入ってきた騎馬民族が優勢となり、現代の中国人の直接の祖となったそうな。

仙人思想の意味

中国人は他人を信用しないのは有名ですね。

仙人になって深山幽谷にぽつねんと小さな家を建てて一人で住むのが中国人にとっての理想。

なぜならそこにはほかの中国人がいないから、とか。

日本という国は中国と絶縁するためにつくられた

唐に滅ぼされないようにちゃんとした「国家」を天智天皇、天武天皇が恣意的に作ったのが日本のはじまり。

日本成立以後はそれまでと違い、きちんとした国書を持っていかなかった。旗幟を鮮明にして対立を煽るのを恐れたということらしいです。

漢籍を読んでも中国の本質はわからない

「この 2000年あまり漢文は中国語ではなかった、なんの関係もない」そうです。ええっ!

この説明にずいぶんなページを割いておられます。

漢籍は文書作成の手本書であり内容は無視されたとか、儒者はその文書作成能力だけが求められたとか、漢文は口語文とは全く関係がないとか、漢文は2000年余り進化する(新語を作るなど)ことが許されなかったので日本語を取り入れて不足していた概念や抽象名詞や固有名詞などを補ったとか、今まで知らなかったことがわんさか。

庶民の生活などは漢籍には書く価値がなかったので研究することは非常に困難とか、前代未聞の事件が起きても公用記録にさえ書かれないこともあったとか、驚くべきことがいっぱい。

とにかく読め

まだまだ書いてありますが、ここらで一息。

日本人には想像もつかない実情が学べます。

こんなことを知らない”中国通”や学者もいっぱいいるようなのが悲しいですね。

とにかくすべての日本人に読んで欲しい名著です。

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