腎嚢胞 腎悩呆?
極論なので笑って読んでくださーい。
***
うちの遠隔画像診断の顧客にはそんな方はおりませんが、他の会社の顧客の話でよく聞くのが、「やたら腎嚢胞にこだわる技師や依頼医(たいてい開業医)がいる」ということ。
それも重要な嚢胞性腎疾患ではなく、単なる単純性腎嚢胞の話。
「嚢胞を指摘しないのは見落としだ」、とかいうらしいですが、こういう人はどういう考えをしているのでしょう。
単純性腎嚢胞
50歳以上の半分の人に普通に見られる単純性腎嚢胞にそんな大きな意味はありません。
こういう嚢胞は病態というほどのものでもなく、単なる退行性変化ですから。
こうした嚢胞の中にごくまれに紛れ込んでいる嚢胞性腎細胞癌(腎癌の中でも相当まれ)の可能性なんてほんのわずかです。
ポピュラーなものの中にほんのわずかヤバいものがまぎれているってことはよくある話で、こういうものに目くじらをたてるってのは、「飛行機事故がまれに起きるので世の中すべての飛行機は使用禁止にしろ」というのと同じではないでしょうか。自動車でもいいけど。
慢性腎不全(透析)と遺伝子異常は明らかな腎癌のリスクファクターですけど、腎嚢胞の存在ってのは腎癌の重要なリスクファクターであるというエビデンスはないでしょう。
単純性腎嚢胞を持っている人と持っていない人とに腎細胞癌(充実性含む)が発生する確率もそんなに変わらないのであれば、単純性腎嚢胞の有無を気にするのは医師や患者の時間の無駄と私は思います。
いわゆる complicated cyst のときだけ気にすればいいわけ(←こいつもなかなかグレてくれませんが)。
だいたい腎細胞癌の発生は男性の方が2倍女性より多いです。この疫学的事実をもって「世の中の男性はすべて腎癌の画像検査を受けなくてはいけない」というヤカラがいたらこれは頭がややおかしいでしょう。医療費高騰でまた税金が上がりますね。
お金や手間の影響のことを考えないでこういう発言をするのは頭の構造があのハトヤマなみなのかもしれませんよ。
「腎嚢胞を異常に気にする人の頭部の精査をオススメします」と所見のコメント欄に書きたくなります。
***
はい、笑って読めました?
###
関連記事
-
-
画像診断2018年4月号 解剖から迫る呼吸器画像診断
画像診断2018年4月号 Vol.38 No.5 画像診断実行編集委員会
-
-
放射線科医の定年退職
* 診断をやっている放射線科医の話ですけど、ぼちぼち定年退職される方も多いでしょう。 でも一
-
-
Grant's Atlas of Anatomy, International Edition〈日本向けインターナショナル版〉
Grant's Atlas of Anatomy, International E
-
-
イーサイトのクラウド型遠隔画像診断システム 利点(2)
イーサイトのクラウド型遠隔画像診断システム 利点(1)を書きました。 2つめの利点ではなく、補
-
-
遠隔画像診断 理想の顧客
私のところの遠隔画像診断では中小病院を主なターゲットにしています。 一人医長など常勤放射線科医
-
-
これは便利なサービス「データ便」
* いくつかの内科開業医さんからの DICOMファイルの受け渡しは、私の借りているレンタルサー
-
-
エレファント・ウーマン
* アフリカゾウの群れは母系家族。 最年長のメスを頂点にその娘たち、孫娘たちで構成される。
-
-
あほな DICOM ビューワー
うちの事務所にあるアッホなビューワーの話。 遠隔画像診断で使っているのですが、通信が遅いし、ク
-
-
PCR検査、抗原検査、抗体検査について
PCR というのはウィルス遺伝子を増幅させる手法を言うのであって、検査自体の名前ではありません。
-
-
日中救急症例を受けられる体制 遠隔画像診断
* わたしは 2005年6月から昼間の遠隔画像診断センターを運営しています。 それまでは自宅
- PREV
- プリンタインク切れ
- NEXT
- 百貌百言 (文春新書) / 出久根 達郎