*

The iliac wing sign / 骨盤外傷のサイン

公開日: : 最終更新日:2014/02/04 画像診断

iliac wing sign

T2WI 前額断像

上の画像は左恥骨体部骨折の症例の急性期の T2WI 前額断像ですが、左の腸骨翼内側にシート状の強い高信号が広がっています。

この部分はいわゆる通常の血腫の経過を取らずに自然に消退していきます。

これについては京大大学院の柿木崇秀先生が EJR に発表され、the “iliac wing sign” と命名されています。

私も以前から骨盤振盪の際によく見られると思っていまして・・・

  1. 骨盤骨折(腸骨とは限らない;むしろ腸骨以外が普通)があることが多いが、ないこともある
  2. 両側性(対称性、非対称性)のこともあるし、片側性のこともある
  3. 片側性のときは外力の強くかかった側に多い傾向があるように思われる
  4. 本態は血腫(血管外出血)ではなく、浮腫あるいは静脈叢の拡張のような状態
  5. ただし、他の部位の脂肪織内の浮腫のような網状の形態をとることはまれ
  6. 自然に消失する

という特徴があると思っていました。

さて興味深いのは出現の機序です。

柿木先生は論文中で筋の構造から説明しようとされていましたが、私は

疼痛刺激による自律神経異常が骨周囲の血流量増加をひきおこしているのが浮腫の原因か?

とずっと思っていました。

ただし、この部分だけに出現する説明が困難でした。

で、最終的な私見では、

疼痛による筋トーヌスの増加は近傍の多数の筋に起こっているが、この部分は腸骨翼の陥凹のために、覆っている腸骨筋が緊張するとこのスペース(腸骨~腸骨筋の間)が引き延ばされ、周囲より陰圧気味になりやすいのではないか。

それを埋め合わせるために浮腫や血管(静脈)の拡張が起きやすく、長く持続するのではないか?

と思っています。

証明が難しいですが。

Morel-Lavallee lesion のように、外傷時の腸骨筋収縮によりこの部分の脂肪織がはがれ、小さな裂隙ができ、そこに液(リンパ液など)が貯留するのか?

という解釈もありそうですが、それならばなかなか消失しないものもあって欲しいところです。

浮腫が主体なのか静脈の拡張が主なのか、造影CT で評価したいところでありますが、通常の横断像では骨に近すぎて部分容積効果の影響が強く、評価が難しいですね。

細かくスライスして前額断で評価したいところです。

もしこの病態について よくご存じの方があるならお教えください。

【参考文献】

Takahide Kakigi, etc.: The iliac wing sign: An indicator of the presence of bone and/or soft-tissue injury of the pelvis and hips.    European Journal of Radiology 81 (2012) 2348-2152

###

関連記事

AI と画像診断

「人工知能(AI)は画像認識が得意なので、レントゲンやCT/MRI の読影の仕事はなくなるのではない

記事を読む

使いにくい画像診断システム(続き)

* 現在、遠隔画像診断システムを6つ使用している私ですが、他にも簡易システムやら非常勤読影バイ

記事を読む

イーサイトのクラウド型遠隔画像診断システム 利点(2)

イーサイトのクラウド型遠隔画像診断システム 利点(1)を書きました。 2つめの利点ではなく、補

記事を読む

no image

とんでもない画像診断システム

   前にもいろいろ書きましたが、今回はとんでもない画像診断システムの話。

記事を読む

読影 画像診断 ウォーリーをさがせ

* 昨日、来客があって、「画像診断医師はどうやって診断しているんですか」と訊かれて、 「よく

記事を読む

索状影と索条影

よく、CT や MRI で「索条影」と書いてあるレポートがあります。 索条とは名詞で、麻・鋼を

記事を読む

遠隔画像診断で画像診断管理加算はとれません というか とってはダメです(2)

* 今度の診療報酬改訂で、 「遠隔画像診断の企業を利用していると画像診断管理加算はとれません

記事を読む

最初の顧客

* 私の勧める起業法(遠隔画像診断での起業法)では失敗をあらかじめ回避できているので、あとの課

記事を読む

著変とは

   著変という言葉を我々医師はカルテなどでよく使います。  でもこの言葉、

記事を読む

恐るべき真実

* この前H先生と話していて、彼が恐ろしいことを言っていた。 「F社もT社もG社もレポーティ

記事を読む

今年欧州の熱波がすごい

いまさらのネタで恐縮ですが、今年 2026年の夏に欧州を襲っている記録

ブレンド3 アイスブレンド 粉(240g×12セット)【小川珈琲 ブレンド3】

京都の小川珈琲さんのコクのある味わいのアイス専用ブレンド。

国芳の猫

歌川国芳(うたがわ くによし、1798–1861)は、江戸時代末期に活

板間クモ膜瘤

よく、クモ膜顆粒と混同されている板間クモ膜瘤についての話です。

日産セレナ e-Power

息子が車を買い替えるとか。 今まで乗った Honda のフリードから

→もっと見る

  • アクセスカウンター
PAGE TOP ↑