The iliac wing sign / 骨盤外傷のサイン

T2WI 前額断像
上の画像は左恥骨体部骨折の症例の急性期の T2WI 前額断像ですが、左の腸骨翼内側にシート状の強い高信号が広がっています。
この部分はいわゆる通常の血腫の経過を取らずに自然に消退していきます。
これについては京大大学院の柿木崇秀先生が EJR に発表され、the “iliac wing sign” と命名されています。
*
私も以前から骨盤振盪の際によく見られると思っていまして・・・
- 骨盤骨折(腸骨とは限らない;むしろ腸骨以外が普通)があることが多いが、ないこともある
- 両側性(対称性、非対称性)のこともあるし、片側性のこともある
- 片側性のときは外力の強くかかった側に多い傾向があるように思われる
- 本態は血腫(血管外出血)ではなく、浮腫あるいは静脈叢の拡張のような状態
- ただし、他の部位の脂肪織内の浮腫のような網状の形態をとることはまれ
- 自然に消失する
という特徴があると思っていました。
*
さて興味深いのは出現の機序です。
柿木先生は論文中で筋の構造から説明しようとされていましたが、私は
疼痛刺激による自律神経異常が骨周囲の血流量増加をひきおこしているのが浮腫の原因か?
とずっと思っていました。
ただし、この部分だけに出現する説明が困難でした。
*
で、最終的な私見では、
疼痛による筋トーヌスの増加は近傍の多数の筋に起こっているが、この部分は腸骨翼の陥凹のために、覆っている腸骨筋が緊張するとこのスペース(腸骨~腸骨筋の間)が引き延ばされ、周囲より陰圧気味になりやすいのではないか。
それを埋め合わせるために浮腫や血管(静脈)の拡張が起きやすく、長く持続するのではないか?
と思っています。
証明が難しいですが。
Morel-Lavallee lesion のように、外傷時の腸骨筋収縮によりこの部分の脂肪織がはがれ、小さな裂隙ができ、そこに液(リンパ液など)が貯留するのか?
という解釈もありそうですが、それならばなかなか消失しないものもあって欲しいところです。
*
浮腫が主体なのか静脈の拡張が主なのか、造影CT で評価したいところでありますが、通常の横断像では骨に近すぎて部分容積効果の影響が強く、評価が難しいですね。
細かくスライスして前額断で評価したいところです。
*
もしこの病態について よくご存じの方があるならお教えください。
*
【参考文献】
Takahide Kakigi, etc.: The iliac wing sign: An indicator of the presence of bone and/or soft-tissue injury of the pelvis and hips. European Journal of Radiology 81 (2012) 2348-2152
###
関連記事
-
-
遠隔画像診断の起業の心得その2
「勤務医根性を捨てろ」とお話しました。 「何時間勤務したから報酬はこれくら
-
-
画像診断管理加算バブルの終焉 テラークへの影響
* 画像診断管理加算バブル崩壊をきたした原因となった一部の関係者には猛省を促したいですが、我々
-
-
とほほな画像診断システム
* これは前に書いたが、Yデンキ(ヤマダではありません)のシステムは ・最初のコマと最後のコ
-
-
地方の中核病院の画像診断における医療崩壊
以前の記事(⇒ 画像診断管理加算バブルの崩壊の影響(2) 地方の中核病院の場合)では、
-
-
遠隔画像診断のビジネスモデル(3)
ビジネスモデルらしくないので、さらに模式図を補完していきます。 * 上段が従来のファイル
-
-
イーサイトのシステムの利点(4)
続きです。 イーサイトヘルスケアの遠隔画像診断システムの利点を紹介します。 放射線科常勤医を
-
-
遠隔画像診断料(保険における診療報酬)
質問が多いので解説しておきます(画像診断管理加算とは違うのですが、少し関連しているので混同しやす
-
-
クラウド型遠隔画像診断セミナー
2011.02.28(月曜日) 昨年12月18日大阪で行われたイーサイトヘルスケア社主催のク
-
-
放射線科常勤医を雇うには
放射線科診断医の雇い方 上記について、久々に遠隔画像診断ブログを更新しました。 http:






