経済で読み解く織田信長 「貨幣量」の変化から宗教と戦争の関係を考察する / 上念 司
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読書
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経済で読み解く織田信長 「貨幣量」の変化から宗教と戦争の関係を考察する 上念 司 ベストセラーズ 2017-02-25 売り上げランキング : 124 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆(読みトク・シリーズ!)
『経済で読み解く明治維新』、『経済で読み解く大東亜戦争』を以前に紹介しましたが、「経済で読み解く」シリーズ第3作の登場です。
目次をご覧ください。
- 序に代えて ~お金の流れで歴史を読み解く
- 第一部 中世の「金融政策」と「景気」
第1章 明の景気が日本経済を左右した時代
第2章 室町幕府の財政事情 - 第二部 寺社勢力とは何なのか?
第3章 老舗「比叡山」vs.新興「京都五山」
第4章 京都五山のビジネスと本願寺の苦難 - 第三部 武将と僧侶の仁義なき戦い
第5章 信長の先駆者たち
第6章 「一向一揆」とは何か - 第四部 信長は何を変えたのか?
第7章 信長の本当の業績
第8章 信長の活躍が日本を救った!
前2作と同じく、主人公は最後の方に出てきます。
今回はいつもより早めのご登場ですが、それでも信長が出てくるのは第四部。283ページ中の 224ページめですね。
それまでは足利義満、義尚、義教、細川政元、蓮如、三好長慶らが主人公です。
貨幣経済現象は奈良時代から見られた
この本は信長本のようですが、じつは経済本なんです。
和同開珎など日本は大昔は自ら銅銭を作っていましたが、銅が枯渇して鋳造できなくなりました。
そうするとマネーサプライが止まって、平安、鎌倉と長期デフレに陥ってしまったのです。
足利義満が明との貿易で物品以外に超大量の銅銭を輸入してそれを貨幣として流通させたので、インフレ基調となり景気がよくなり、平和になって、幕府の力が高まりました。日明貿易は「日銀」貿易(日銀と同じことができるようになる貿易)なんですね。
次の義尚は対明貿易を止めたため景気が悪くなり、それ以後政情不安定となってしまうということを資料を使って説明しています。
デフレが続くと人心は不安定となり戦乱が活発となるわけです。ようするに戦国時代はデフレが起こしたわけですね。
石見銀山や佐渡金山が開発されるのは信長の時代より後ですが、そのころになって日本がまた自ら貨幣を鋳造できるようになるとデフレが抑えられ、それで泰平の江戸時代を謳歌することができたわけですね。
要するに、貨幣の元となる金銀銅は石油や鉄、ダイアモンドなどのほかの資源と同じように国を富ませるのですが、金銀銅は貨幣の原料として使用すればデフレを回避し、持続的に国を富ませ政情を安定させるという特殊効果がある格別な資源だったということです。まあ、今は紙幣があるので貨幣として使う必要はありませんが。
織田信長のやったことで最重要なもの
信長は最後の3年を除けば中小企業のイケイケ社長とほぼ同じことをやっていると書いてあります。そう言われれば納得です。
奈良時代からの興福寺のように日本では寺社が中国との貿易、荘園の管理、貸金業などを独占していました。そして権力者との間に「代官&越後屋システム」を構築していきます。
比叡山、京都五山(臨済宗)、浄土真宗、日蓮宗などがそうやって権力と金を求めて争うようになりますが、信長は敵対するこれらを退けるものの、信仰そのものは禁じませんでした。自分の邪魔さえしなければ。信長の宗教弾圧はイデオロギー的なものではなく、プラクティカルなものであったわけです。
室町幕府を完膚なきまで滅ぼしたことよりも、関所を廃したことのほうが功績が大きいかもしれないという記述はまさに経済本です。
*
まあ、読んでみて。面白いから。
誤植
人名の間違いを2か所見つけました。
- 義持⇒義教:p157
- 政長⇒長政:p218
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