Zinner症候群
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医療
大昔、京都大学の大学院生であったときの話、ある先輩が
「そのうちコンピューターで調べたらすぐわかるようになるから、いちいち個々の疾患なんて勉強しなくてもいいんじゃないの」
とおっしゃっていましたが、私は2つの理由で違うと思いました(内心思っただけで、その方に異論はぶつけておりません)。
- いちいち調べていては一日 100件の読影はこなせない
- 知らない病気は診断できない
からです。
100件こなすには、
- 画像を見てすぐに見当がつき、
- そこから必須ポイントを確認して、
- 典型的な所見、非典型的な所見を区別して書いて、
- 最後に自分の経験からくるアドバイスを加える
という過程を、ほぼ無意識に遂行する必要があります。
無意識にやるのは脳を疲労させないために必要です(しかし、最低 20件ごとに小休止を入れる必要がありますが)。
この過程が使えないケースでは、別のモードで診断する必要があります。丁寧に 1コマ1コマ所見を拾っていくのです。
*
「知らない病気は診断できない」というのは、所見は拾えてもそれがどういう意味を持つのかわからないということです。
たとえ所見は記載できても臨床的にあまり貢献できないわけです。
よく見るありふれた所見でも ほかの所見と組み合わさって、ある疾患を強く示唆する場合があるわけです。
つい先々週にも Zinner 症候群らしき患者さんを MRI で見つけました。
画像の異常は以前から指摘されていたのですが、何の疾患か解明されていなかったようです。
ちなみに私も医師になって 43年になるのですが、Zinner 症候群を見るのは初めてでした。
でも知っていたので、「Zinner 症候群疑い」と書けたわけです。
どんな疾患かって? → Genspark に丸投げします。
Zinner症候群
Zinner症候群は、男性のまれな先天性泌尿生殖器奇形です。典型的には、片側の腎無形成(または高度形成不全)、同側の精嚢嚢胞、射精管閉塞の3つがそろう病態として説明されます。胎児期の中腎管(Wolff管)の発生異常が背景にあり、腎臓と精嚢が同じ発生系統をもつため、これらの異常がセットで起こります。発生異常の時期は妊娠4〜13週ごろとされています。
症状は人によってかなり差があり、無症状で偶然見つかることもあります。一方で、症状がある場合は、排尿時痛、頻尿、尿路感染、会陰部や下腹部の痛み、血精液症、射精時痛、不妊などがみられます。診断は成人の性活動・生殖活動が活発な時期にされることが多い一方、小児や思春期で見つかる例もあります。嚢胞が大きいほど症状が出やすいとされます。
診断では、まず超音波で異常が疑われ、確定や詳細評価にはMRIがとても重要です。MRIは、骨盤内の嚢胞性病変と、同側の腎欠損・形成不全の関係を把握しやすく、Zinner症候群の診断に特に有用とされています。場合によってはCTや、成人では膀胱鏡・精路造影などが使われることもあります。
治療は、症状がない、または軽い場合は経過観察が基本です。逆に、痛みや排尿障害、不妊症状などがはっきりある場合は、手術治療が検討されます。選択肢には嚢胞穿刺のような一時的対症療法から、射精管の処置、さらに腹腔鏡・ロボット支援下での精嚢病変切除まであります。最近は、周囲の重要構造を温存しやすいことから、低侵襲手術が好まれる傾向です。
特に若年者では、無症状例が長期フォロー中も安定していることが多い一方、長期の経過観察が勧められます。また手術時には、反対側の精路や神経損傷、将来の妊孕性への影響にも注意が必要で、症例によっては精子凍結保存が検討されます。
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