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腓骨遠位の骨腫瘍? 青池嚢胞 Aoike’s cyst

公開日: : 最終更新日:2016/04/05 画像診断

aoike_cyst2

 

先日、MRI の依頼で 60代の男性で、依頼書の検査目的の欄に

「単純レ線で片側の腓骨遠位に円形の透瞭像があり、骨腫瘍を疑う」

というものがありました。

MRI(上の画像)を見てみると、骨腫瘍ではなく、遠位前脛腓靱帯の付着部の高さで、その内側の腓骨前面の骨皮質が陥没しているだけでした。

ということで、診断は so-called Aoike’s cyst (いわゆる青池嚢胞)にしました。

この診断名をつけるのは生まれて初めてでした。

テラークのメンバーに 「Aoike’s cyst って ググっても出てこないので 死語かな?」と訊いたら、ほとんどの人はこの名前をご存じなかったです。

しかし、メンバーの一人が国立国会図書館で原著を見つけてくれました。

1956年(古っ!)の臨床外科(Journal of clinical surgery) 11(10) の p653-656 に掲載された

「腓骨下端Metaphyseに発見せる骨透明巣 / 青池勇雄」

です。

青池勇雄(あおいけ いさお)氏は東京医科歯科大名誉教授で、1910年生まれの整形外科医の大家です(2002年にご逝去されています)。

もう一人のメンバーは、

関節リウマチで見られる distal fibular notch が似ているでしょうか

ということで

Skeletal Radiology September 1997, Volume 26, Issue 9, pp 529-532 の

Distal fibular notch: a frequent manifestation of the rheumatoid ankle

という論文を探しだしてくれました。

この症例はリウマチとは縁遠そうですが・・・

日本語の雑誌ですし、古いので、年配の日本人医師以外はこの名前を知らないと思います。

それに原著が 1956年なんで 私の生まれる前で・・・当然CTもありません。

CT 時代の論文があるかなと思ったのですが、どうもなさそうです。

MRI の論文もないのも当たり前でしょうか。

あとで西村一雅先生に訊いたら、「それ(Aoike’s cyst)でええんちゃう」 と言われました。

いずれにしろ、Aoike’s cyst 自体の臨床的意義はほとんどないようなので、死語の眠りを覚まさないように、安置しておくのがいいのかもしれません。

***

掘り返すようですが、Aoike’s cyst の本態はなんでしょうね?

遠位脛腓靱帯は滑膜のない線維軟骨結合(半関節)なので、リウマチだとか滑膜炎の侵食による可能性は低そうです(化生により滑膜組織ができることはよくあるので、完全に否定はできませんが)。

上の写真では骨の erosion 部分に細長い液貯留腔があるようです。

化生により発生した滑液包で、これが靱帯によって最も可動性の低いこの部位に圧を加えたのでしょうか。

本来、関節周囲の滑液包は圧を和らげるクッションとして生じる(生体の防御反応)のですから、「圧を骨に有効に伝えてどうする?」・・・ちょっと考えにくいような気がします。

それに滑液包の圧迫によりできたのであれば、凸面の腓骨前面よりむしろ凹面になっている脛骨側にできそうなものです。

ううーん、じゃあ、滑液包でなく、ガングリオンが退縮したものでしょうか。十字靱帯ガングリオンのように靱帯近傍にできてもいいわけで(遠位前脛腓靱帯ガングリオン?)。

昔は粘液産生が豊富で接する腓骨に erosion をきたしたが、その後活性を失ってしぼんだ・・・

と考えると 矛盾はやや少なそうな気もしますが、Stafne 骨嚢胞で感じるのと同じようなモヤモヤした気分になります。

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