医局と系列病院と人間爆弾
*
病院の勤務医の話ですが、ちょっとした病院(大きな病院、公立病院など)であればどこかの大学医局から派遣してもらっていることが多いです。
そういう病院を大学医局の系列病院と呼びます。
そうした場合、ときどき医局の政争で破れた人が送られてくることがあります。
病院としてはいまの既存の仕事が回らないので新たに人を雇いたいということで、医局に「いい人」を送ってくださいと頼むわけですが、ときどきとんでもないのが来たりします。
この人、
この病院には私の仕事はない。
私の得意な仕事を新たに始めるので新しい外来をつくれ。
私の仕事に必要な特殊な機械を買え。
とか無理難題を言ったりします。
本人は 「こんな病院でも私が最高の医療を行ってやるのだから意見をきいて当然だ」 という心づもりらしいのですが、病院側としては今滞っている仕事を正常化するために給料を払って雇ったので、とにかく普通の仕事をして欲しいと思うわけです。
現場の医師(特に担当科部長)が、「今の仕事をなんとか回すために新たに人を雇ったのに、雇った人がその仕事をせずに余計な仕事を始めた。ついてはもう一人雇って欲しい」なんて病院にはとても言えません。
なんとかなだめて仕事をさせようとしますが、実のところこういう医師は普通の仕事が普通にできなかったりします。
場末の病院を「大学病院のように」してあげる
とか変な使命感を持っていることもあります。
赤字で苦しんでいる市中病院を、年間何十億円も赤字を垂れ流す大学病院(最近は心を入れ替えてせっせと稼ぐようになったところもありますが)に似せようとするなんて、市中病院の院長にとっては疫病神以外のなにものでもありません。
ということで、こういう人のおかげで、ある病院がほかの大学医局系列に替わることがあります。一部の人は「人間爆弾」と呼んでいます。
こういうわけのわかっていない医師は病院にも迷惑、医局にとっても非常に迷惑なんです。
本人は「オレが正しい」と思っているんですけどね。
###
関連記事
-
-
若手整形外科医のための画像診断-症例から学ぶ治療診断の立て方 (「関節外科」2013年 04月号増刊)
関節外科基礎と臨床増刊 若手整形外科医のための画像診断-症例から学ぶ治療診断の立
-
-
covid-19 PCR検査の感度問題
米国内科学会の雑誌に載った論文(Ann Intern Med. May 13, 2020.)
-
-
「パロチンはあります!」とオガタさん
* 幕末の蘭学者で適塾の創始者として有名な緒方洪庵はご存じでしょうか。 その孫に東京帝国大学
-
-
遠隔画像診断会社の業務(診断以外)
* 遠隔画像診断会社の業務として、診断以外の雑用が結構あります。 契約など、相手の病院が大き
-
-
Crowned dens syndrome じゃない
以前このような画像が "crowned dens syndrome" の典型像として雑誌や書
-
-
mucor(ムコール)について
ムコール症という病名があります。 mucor(英語), Mucor(独語) というのはケカビ(
- PREV
- 偏差値教育
- NEXT
- 東芝レグザ42Z1 にUSBハードディスクを増設