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血脈の世界史 / 児嶋由枝(2)

公開日: : 読書


★★★☆☆

以前も紹介した本ですが、また読み返してみました。

王家も歴史を見れば、今にも続くものもありますが、すでに滅んだもののほうが多いです。
王と言っても、実質は広域暴●団の組長なので、どんどん殺されます。

それをふまえて読めば、まあ面白い。

世界史の本、と言いつつ中身はガチガチの「西洋史」。
しかも一般的な政治史や戦争史はほぼスルーして、ひたすら王家の血筋だけを追いかけるという潔さです。
「誰が誰の孫で、誰の従兄弟で…」を辿っていくうちに、バラバラだった知識のパーツが「あ、そうだったのか!」とカチッとハマる瞬間が何度も訪れます。
歴史クイズ番組を見ていて突然全部の点が線になる、あの快感です。

もちろんハプスブルク、ブルボン、ホーエンツォレルン、メディチといった「ヨーロッパ史の常連」の名家たちも登場しますが、地味に嬉しいのが英国王室、北欧三国、ロシア皇帝一族、さらにはリヒテンシュタインやモナコといった「え、そんな小国まで拾うの!?」という王国や公国系のラインナップ。
守備範囲が広すぎます。

たとえば英国王室。
女系相続もアリなので、王朝の名前はコロコロ変わるのに、実は母系でちゃんと前王朝とつながっているという、なんともややこしい仕組み。
現在はエリザベス女王の「ウィンザー朝」から代替わりして、父である亡きエジンバラ公フィリップ殿下の姓「マウントバッテン」がくっついて「マウントバッテン・ウィンザー朝」になっています。
ちゃんと父親の系譜を尊重しているところがポイントですよ。

そのフィリップ殿下、遡ると祖父がギリシャ王ゲオルギオス1世、曾祖父がデンマーク王クリスチャン9世、高祖父がロシア皇帝ニコライ1世、そして高祖母がまさかのイギリス女王ヴィクトリア。
もはや「ヨーロッパ王室オールスター」を一人で体現している状態です。
ちなみにマウントバッテン家は、お母様の実家(ドイツ・ヘッセン大公家の分家)由来だそう。血筋、盛りすぎ。

御本人はエリザベス女王のムコになるときにほとんど流浪の状態だったから だいぶ世間から叩かれたそうで、これだけの血脈も言うほどの価値はないのかもしれませんね。

北欧三国もなかなかのカオスっぷり。

初代ノルウェー国王は、実はデンマーク王(グリュックスブルク家)の孫で、しかも国民投票でわざわざ承認されてから即位したという、妙に手続きが丁寧な誕生秘話つき。
昔はこの北欧三国は一国にまとまっていたときがあったそうで、分離独立したときに王様がいない→だったら以前の王家から分けてもらえばいいじゃない→ついでに国民にも信を問うておくかあ というお話。

さらにスウェーデンだけは毛色が違って、なんと元をたどればナポレオンのライバルだったフランス貴族、ベルナドット家が今も王位を継承中。北欧のど真ん中に、フランス人の血が紛れ込んでいるという不思議。
これも王家が途絶えたときに貴族が勝手にフランス(ナポレオン)と謀ったもの。
ベルナドットって昔ジョセフィーヌと結婚するためにナポレオンが捨てた元カノの夫という以外になんの血脈もない人。
これでいいのか。
まあ、こういう 実力はないのに他人の事情から名家に成り上がったハプスブルク家という先達もいるからなあ。

そしてモナコ。
大公位を継いでいるのはジェノヴァ出身のグリマルディ家ですが、実はフランスとの間に「男系の跡継ぎが途絶えたらモナコはフランスの一都市になる」という、なかなか物騒な協定が結ばれているそうです。
つまりこの国、後継ぎ次第では地図から消える可能性を常に抱えているという、ミニ国家ならではのスリル満点設定。
国まで賭博ティックな性格なのは面白い。

……と、こんな調子で「知ってるようで知らなかった王家の裏事情」が次々出てくる、読み出すと止まらないタイプの一冊でした。
記述は淡々とした、著者にとっては大真面目な著作なんですが、内容があまりにおもしろい。

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