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2000万円を不正受給? 彦根市立病院放射線科医師のケース

公開日: : 最終更新日:2014/05/19 画像診断 , ,

滋賀県彦根市は30日、市立病院放射線科部長の男性医師(46)が3年6カ月にわたって計2064万円の時間外勤務手当と休日勤務手当を不正受給していたと発表した。市は同日付で停職1カ月の懲戒処分とし、男性医師は依願退職した。不正受給額は全額返金している。

 市立病院によると、男性医師は2009年夏ごろから、病院が委託する画像診断会社のシステムを利用し、放射線画像の診断業務を自宅で実施。10年1月~13年6月まで、毎月100~170時間の時間外手当を申告。病院が調べると、会社へのアクセス記録と男性医師の申告時間とが食い違っており、虚偽が発覚したという。

 男性医師は実働時間ではなく、画像診断1件につき全て20分換算で申告。「悪意は無かったが軽率な申告をしたことを重く受け止めている」と話しているという。

元ネタ> http://www.chunichi.co.jp/s/article/2013093090201612.html

遠隔画像診断が関与している話なので、ちょっと考えてしまいました。

ちょっと机上の空論になりますけど。

2064万円を 42ヶ月ですから 1ヶ月あたり 49万円ですか。

時間外手当がいくらなのか不明ですが、100-170 時間分ということですから、間をとって 135時間分とすれば時給 3640円になりますね。

「1症例に 20分かけていることにして請求していた」という証言を載せていますから、1例あたり 1210円ちょっと。

不正受給にしては安すぎませんか

自宅での団欒時間をけずって、これっぽちでは割にあわないと思います。

私にはものすごく良心的な価格に思えます。

遠隔画像診断会社に頼めば1例 2500~3500円(読影医の取り分は 1500-2000円)。

病院には保険制度から1例あたり 4500円が入るわけですから、1210円ですめばありがたい話です。

勤務医の中には

おれは臓器専門家なので●●の臓器の診断しかしない

と言って、1日10例(年間2500例)くらいしか診断していない人もいます。

それで2000万円近くもらっている人もいます(こういう人はたいてい年齢が高く部長や助教授クラス)。

こういう人は1例 8000円にもなるわけですよ。8千円。病院の収入(4500円)を超えてしまっています。

彦根市のケースは時間外を「病院が委託する画像診断会社」のシステムで行っているわけですから、1例いくらで支払えば不正受給ではなかったわけです。

こういう遠隔画像診断は1例いくらで払うのが常識なのです。

その常識に従わず、病院が「時間外勤務の時給換算」にこだわったことが今回の問題の一番の元凶 と思います。

こういう頭の古いところに優秀な人を送るのは考えものです。

へたをすると燃え尽きてしまうからです。うつになるか、屋上から飛び降りてしまう人もいます。

病院に改革を促すためには、医局は次の人を送らないか、なるべく仕事の遅い人を数人タッグ(倍返し)で送るようにするといいと思います。

それにしても全額没収とはどういうことでしょう。

ちゃんと仕事はしていたわけですよ。

不正請求ではあったが、ちゃんと仕事をして、しかも少なめ(1210円)に申告していたわけですから、むしろ病院は 1例 1500-2000円 分(相場)で換算して不足分をボーナスとして加えてペイバックすべきでしょう。

割増請求でなく、割引請求なのですから。

もしこの件で全額没収で味をしめたら、放射線科医以外の常勤医でも 超過勤務分の時刻が間違っていただけで「不正請求なので全額返金しろ」と言い出しかねませんよ、この病院。

しかし、今回のことをあばいた人は自分を英雄扱いしたいでしょうが、ちょっと浅はかです。

物事には原因があることがほとんどなので、ちょっとおかしいなと思うことにも やむにやまれぬ事情がないのかと探る必要があります。

原因を直さずに現象だけを是正すると、せっかく機能していた「現場の知恵」をぶち壊し、問題を元に戻してしまいます。戻すどころか奥の手を封じてさらに悪化させてしまいます。

今回も「仕事の量に比べて常勤医が少ない」という原因があるわけですから、そこを是正しないといけないのに、「少ない常勤医をさらに無理甥をお願いして働かせる妙案」だった「自宅での時間外勤務」を事実上できなくしたことは大きな罪になります。

少なくとも今回のことで、日本の放射線科医で 自主的にこの病院で働こう と思う人はいなくなったはずです (正確には、これまでも自主的に働こうとする医師はいなかったが、医局が無理になだめて派遣していた;これからは医局から無理強いされてもここで働くという医師はいなくなった、と言うべきでしょうか)。

以前、毎日新聞奈良支局のアホ女記者が、奈良県の産科医療を崩壊させた(自分のお産のときは大阪で行った)のと同じ構図をここに見ます。

問題解決は原因をつきとめてから」、「対策は原因に対して行う」というのは問題解決の基本。あの大前研一も耳タコになるほど書いていることですがねぇ。

以上、ウェブサイトからの情報を元に書いているので、事実誤認があればお詫び申し上げます。

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