日別アーカイブ: 2014年2月25日

恋する寄生虫―ヒトの怠けた性、ムシたちの可愛い性 / 藤田紘一郎

恋する寄生虫―ヒトの怠けた性、ムシたちの可愛い性 (講談社プラスアルファ文庫) 恋する寄生虫―ヒトの怠けた性、ムシたちの可愛い性 (講談社プラスアルファ文庫)

藤田 紘一郎

講談社 2001-08

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★★★☆☆

「笑うカイチュウ」で有名な藤田紘一郎先生の作品。

今回は寄生虫とヒトのセックスにまつわる裏話がいっぱい。

「恋する寄生虫」だけではなく、ヒトの愛情物語も満載。「恋する帰省中」かも。

住血吸虫

本書の表紙は住血吸虫のイラストですね。

メスをオスが自分のくぼみに抱きかかえたまま生活するという愛情深い寄生虫。

ウェステルマン肺吸虫

ウェステルマン肺吸虫の幼虫は第1中間宿主のカワニナという貝の中で、ミラシジウム⇒スポロシスト⇒レジア⇒セルカリアというふうに幼虫の形態が変わっていき、第2中間宿主のサワガニにセルカリアが移り住みます。

そこでメタセルカリアになるわけです。

このサワガニが最終宿主(ヒト、ネコ、タヌキなどの小哺乳類)に食べられてそこで親になるのです。

以上は、医師なら聞いたことありますよね。

私がいつも不思議に思っていたのは・・・なんでカワニナの中でそんだけ”脱皮”しないといけないのかなということ。

1人でカワニナの世界に入って、そこで経験値を積んで何度か転職して、”飛空艇”を手に入れてカニの世界に行き、そこで最終進化をしたが、その世界が崩壊し、すんでのところで脱出して、新しい世界で姫と結ばれる・・・・

なんて、ファイナルファンタジーのような壮大なリスキーかつスリリングな一生を想像していたのです。

なんてつらい一生なんだ。試練が多すぎる。運良くサワガニにたどりついてもそこで体内に入れないと終わりじゃないか。最終宿主に行っても、そこに姫がいないと子孫を残せないじゃないか~ よくこんな過酷なシステムで今まで生き残ってきたなあ・・・

というふうに思っていたのですが、この本の p80 に

その虫卵の中に生じた 1匹のミラシジウムがカワニナの中で10匹前後のスポロシストになり、1匹のスポロシストは10匹のレジアになり、1匹のレジアは20匹のセルカリアになる。

つまり、1匹のミラシジウムがカワニナの中で 2000匹のセルカリアになる。

というふうに書いてあり(どっひゃあぁ~)、長年の疑問が氷塊。

  1. 幼虫だから増えないと思っていた
  2. 昆虫の脱皮のようなものだと思っていた

という思いこみが大誤解の原因でした。

運任せではなく、新天地に飛び出す前に数を膨大に増やして、「へたな鉄砲も数うちゃ当たる」ような万全(アバウトながら効果的)な準備を行うための超合理的なシステムだったんですね。

マンソン孤虫

じつはこの一つ前の記事「マンソン孤虫のパパはバカボンのパパなのだ 」はこの本を今朝の電車の中で読んで、事務所に着くまで歩いていた最中に考えました。

この本にはマンソン孤虫は出てこないんだけどね。

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マンソン孤虫のパパはバカボンのパパなのだ

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寄生虫の話を少し。

私は寄生虫疾患が大好きです。

以前ここでも「孤虫の意味を知っているかい」 という記事を書きましたが、その話。

孤虫とは

孤虫は生物学的な分類ではありません。

orphan worm、つまり”親のわからない幼虫”ということです。

素性がわからないので、分類上どこに分類したらわからないので仕方なく名づけただけなんです。

孤児になった複雑な事情

「親がわからないって? 昆虫の幼虫なんかはほおっておいたら自然に成虫になるからすぐわかるのでは?」

と普通の人は思うでしょうが、そんなムシのいい話ではなく、そこは寄生虫ならではのある事情があるのです。

寄生虫には世代によって宿主を変えるものがほとんどなんです。

ある動物からは幼虫しか見つからず、別の動物からは成虫しか見つからない、というわけです。

この両者の親子関係を明らかにするのが至難の業。

マンソン孤虫はヒトが宿主(じつは本来の宿主ではない)。でもその親は不明。なぜなら宿主がわからないので、見つからないのです。

親虫の宿主はヒトでないことはわかっていますが、どの動物なのかわからない。

哺乳類であることが多いですが、そうとも限りません。カニ、昆虫、貝(カタツムリ含む)かもしれないのです。

探しようがないじゃないか~

DNA分析は?

人間なら片親(普通は母)がわかっていて、父親が誰かを特定するのには使えますが、あくまで父親候補が存在してそのDNAが採取できないとわかりません。

存在していないDNAをどうやって調べられるの?

つまりマンソン孤虫の場合には無力。

そもそも有性生殖とは限らないしね。

日本人はすごい

話がそれましたが、マンソン孤虫の親は今ではわかっています。

日本の山田ハカセの功績によってです。

そのへんは以前の「孤虫の意味を知っているかい」 という記事に書いたので、そちらをごらんください。

あらましは・・・

マンソン博士が中国で見つけた寄生虫症に「マンソン孤虫症」と名付けたわけです。

このマンソン孤虫をいろんな動物に植え付けて、最終宿主(イヌ、ネコなど)と親虫を明らかにしたのが日本の山田ハカセ。

親虫は未発見の裂頭条虫でした。

通常なら山田裂頭条虫と名付けて、マンソン孤虫症は「山田裂頭条虫幼虫移行症」と改名されるべきでした。

ところが山田博士は自分が最初に発見したその親虫を「マンソン裂頭条虫」と名付けたのです。

バカボンという子供がいて、親を探したところ「バカ田フジ夫」という人が見つかったのに、その親を「バカ田フジ夫」と呼ばず「バカボンのパパ」と名づけたようなもの。

ちょっと違うか。

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前回とはオチを変えてみました(前回はオチをつけなかったので落ち着けなかった)。

これでいいのだ。